第 60 回東北哲学会研究発表要旨

知識の物語り論序説
― 一人称知識言明の分析を通じて ―


山田圭一(山形大学人文学部)

認識論は20世紀後半に「第二の認識論的転回」と呼ぶべき大きな転回を遂げた。その結果として産み出された現代認識論は、クワインの流れを汲んだ「自然主義的認識論」と、ゲティア問題への回答から出発した「分析的認識論」とに大きく枝分かれてしてしまっている感がある。

私は、現代認識論のこの二つの流れを橋渡ししうるような認識論の総合的な体系を構築したいと考えている。そしてそれが、「語られる知識」という側面から知識にアプローチする「知識の物語り論」によって可能となるのではないか、と考えている。

知識の物語り論は、知識についてのすべての語りが「『ある認識主体(S)はpを知っている』と話者(A)が、聞き手(B)に向かって言う」という構造をもっていることに着目するところから出発する。本発表では一人称知識言明(「私(S)はpを知っている」と私(A)が語る)に焦点を絞った上で、オースティンと野家啓一の考察を借用しながら、一人称知識言明がもつ言語行為としての側面と物語り行為としての側面をそれぞれ解明し、両者がどのような関係になっているのかを明らかにしてみたい。

そして以上の考察を通じて、一人称知識言明が果たす機能とこの言明が位置づけられる社会的文脈を明らかした上で、知識が言語的かつ社会的に構成されていく様を描き出してみたい、と考えている。




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