鈴木岩弓
専門
宗教学、宗教人類学、宗教民俗学
関心領域
(1)現代社会の祖先祭祀
現代日本においても広く見られる「祖先祭祀」は、イエを基盤に行われている信仰現象である。
とはいえ戦後間もなく<制度としてのイエ>は姿を消し、さらに<観念としてのイエ>も近年の社会変動の波を受けて大きく揺らいでいる。家族形態の変化、少子化現象、結婚を前提としないライフヒストリーの登場etc.といった動向は、従来までの社会関係に様々な変化を引き起こし、とりわけイエを基盤に行われてきた従来までの祖先祭祀に多くの問題を突きつけている。
そのような祖先祭祀の現代的問題について、韓国やインドネシアの事情も比較検討しながら、イエ観念・祖先観・霊魂観・他界観・死生観といった観念のレベルから研究を行っている。
(2)流行神現象のメカニズムの解明
夢のお告げなどで突然出現した神仏が、非常に霊験あらたかであることが判明し、その直後から多くの参詣者で賑わうという現象は、日本宗教史の流れの中でもしばしば散見される。
このような神仏は一般に「流行神」と呼ばれてきたが、過去の流行現象のみならず、近年出現した流行神に着目して、流行する神仏の形成過程を把握すると共に、そのような信仰現象が庶民の間に普及していくメカニズムの解明を目指している。具体的事例としては、広島県府中市にある「首無地蔵」の事例研究を継続的に実施している。
(3)「民間信仰」概念の再考
昨年1997年は、民間信仰研究にとって節目の年であった。というのは民間信仰の語の初出となった姉崎正治の論文、「中奥の民間信仰」(『哲学雑誌』)の出版が今を去ること百年前の明治30年のことであったからだ。民間にみられる「多少正統の組織宗教と特立したる信仰習慣」を指す語を迷信などと呼ぶことに疑問を感じた姉崎は、「民間信仰」を造語することで新たな研究領域を確定したのである。以後この分野は宗教学のみならず、民俗学・文化人類学・社会学etc.の分野からも研究対象とされ、「民俗宗教」「庶民信仰」etc.の類似概念も多数出されてきた。
また「民間信仰」の語は、韓国・中国・台湾etc.においても同じ漢字語としてしばしば使用されている。
このような状況を考えて、宗教学のみならずその隣接諸科学の研究者、東アジアの宗教研究者との間で「民間信仰」概念の再考を行っている。
略歴
| 1951. 8 | 東京にて出生 |
| 1977. 3 | 東北大学 文学部 哲学科 宗教学宗教史専攻 卒業 |
| 1977. 4 | 東北大学大学院 文学研究科 博士前期 入学 |
| 1979. 3 | 同上 修了 |
| 1979. 3 | 東北大学大学院 文学研究科 博士後期 進学 |
| 1982. 4 | 同上 単位取得退学 |
| 1982. 4 | 島根大学助手 (教育学部) 採用 |
| 1984. 4 | 島根大学講師 (教育学部) 昇任 |
| 1987. 4 | 島根大学助教授 (教育学部) 昇任 |
| 1992. 4 | 東北大学助教授 (文学部) 転任 |
| 1997.12 | 東北大学教授 (文学部) 昇任 |
業績
※ 1998年時点のものまで掲載しています。
著書
| 1991. 2 | 『文化と現代世界 −文化人類学の視点から−』嵯峨野書院 |
学術論文
| 1979.12 | 「山岳信仰の構造 ―飯豊山登拝をめぐって―」 『論集』第6号 (印度学宗教学会) |
| 1981. 5 | 「明治期の飯豊山信仰 ―飯豊山講社を中心に―」 『東北民俗』第15輯 (東北民俗の会) |
| 1982. 3 | 「『もり供養』の一考察 ―参詣者の行動と意識をめぐって―」 『日本文化研究所研究報告』別巻第19集 (東北大学) |
| 1982. 5 | 「『もり供養』における<伝承>をめぐって」 『東北民俗』第16輯 (東北民俗の会) |
| 1983. 3 | 「小牛田山神社における現世利益信仰」 渡辺信夫編『宮城の研究』第7巻 |
| 1983.12 | 「柳田國男の祖先崇拝論 ―『先祖』と『家』の観念を手がかりに―」 『論集』第10号 (印度学宗教学会) |
| 1984. 3 | 「摩尼寺における死者供養の一考察」 『山陰文化研究紀要』第24号 (島根大学) |
| 1985. 3 | 「島根半島北岸漁村における位牌祭祀の実態」 『山陰地域研究』第1号 (島根大学) |
| 1985.10 | 「摩尼寺における死者供養の形態と構造 ―仏教民俗学的一考察―」 『山陰民俗』第45号 (山陰民俗学会) |
| 1986. 3 | 「柳田國男における『教育』の位置」 『社会科研究』11 (島根大学教育学部社会科研究室) |
| 1986. 3 | 「松江のホ−ランエンヤ―都市における伝統的祭りの実態―」 『山陰地域研究』第2号 (島根大学) |
| 1987. 3 | 「<檀家を持たない寺院>における『祈り』の実態−摩尼寺の事例を参考に−」 『山陰地域研究』第3号 (島根大学) |
| 1988. 3 | 「聖地の復興運動としての石仏奉納−立久恵峡の千体仏−」 『山陰地域研究』第4号 (島根大学) |
| 1988.11 | 「流行神の誕生−『首無地蔵』を事例に−」 『地域社会教室論集』No.4 (島根大学法文学部地域社会教室) |
| 1989. 3 | 「出雲の機能神−神社信仰にみる現世利益信仰−」 『古代出雲文化の展開に関する総合的研究』 (科研報告書) |
| 1989. 3 | 「差海の神事華−神社信仰における『祭礼』の意味−」 『山陰地域研究』第5号 (島根大学) |
| 1989.11 | 「西中国山地の狩猟伝承」 山村民俗の会『狩猟』エンタプライズ社 |
| 1989.12 | 「伯耆大山山麓の木地屋」 山村民俗の会『杣と木地屋』エンタプライズ社 |
| 1990. 3 | 「伯耆大山信仰−縁起に示された大山の霊威−」 『日野川流域の民俗』 (米子高専) |
| 1991. 2 | 「因州摩尼山の死者供養」 山村民俗の会『山の歳時記』エンタプライズ社 |
| 1992. 3 | 「寺社縁起にみられる神仏出現譚 -『雲陽誌』を手がかりに-」 『山陰民俗』第57号 (山陰民俗学会) |
| 1992.12 | 「『流行神』の誕生と霊験−横樋観音の場合−」 『島根大学教育学部紀要』第26巻 (島根大学教育学部) |
| 1994. 1 | 「海からあがった仏様」 『郷土史ひらた』6 (平田郷土史研究会) |
| 1994. 3 | 「戦後における柳田國男の『祖先祭祀』観」 『東北大学文学部研究年報』第43号 (東北大学文学部) |
| 1995. 3 | 「庄内地方における『もり供養』の寺院行事化現象の実態」 『日本文化研究所研究報告』別巻第32号 (東北大学) |
| 1995. 3 | 「祈りと信仰圏−信仰現象における中心と辺境−」 『社会と文化における中心と辺境』 (東北大学文学部) |
| 1995.11 | 「庶民信仰の形成−『首無地蔵』にみる地蔵出現の意味−」 楠正弘編『宗教現象の地平』岩田書院 |
| 1995.12 | 「『首無地蔵』信仰の展開構造」 『宗教研究』第69巻第3輯 (日本宗教学会) |
| 1996. 6 | 「山上霊地の死者供養−清水の『もり供養』にみる近年の変化−」 『東北民俗』第30輯 (東北民俗の会) |
| 1997. 3 | 「墓が語る現代−仙台市葛岡墓園の場合−」 『東北文化研究室紀要』通巻第38集 (東北大学文学部) |
| 1997. 9 | 「柳田國男と『民間信仰』」『東北民俗学研究』第5号 |
| 1997.11 | 「中日民間信仰研究的歴史回顧」 『民間文学論壇』1997年第4期 (中国:陶 思炎と共著) |
報告書など
| 1981. 3 | 「第7章 信仰生活」『南川の民俗』 (東北歴史資料館資料第4集) |
| 1985. 2 | 「第10章岩手県種市市角ノ浜 6.信仰生活」 『三陸沿岸の漁村と漁業習俗 (下巻) (東北歴史資料館資料集11) |
| 1988.12 | 『木曽谷・菅の民俗』 (編著) (島根大学教育学部社会学研究室報告第1号) |
| 1990.10 | 「人生儀礼」「年中行事」 『志津見の民俗』 (志津見ダム民俗文化財調査報告書) |
| 1990.10 | 『熊野大社』 (共著) (熊野大社) |
| 1992. 3 | 『「流行神」の形成とその展開に関する実証的研究 −中国地方の事例を中心に−』 (科研 [一般(c)] 報告書) |
| 1994. 3 | 「松江の小・中・高・大学生にとって有名な『韓国人』とは?」 『日韓相互理解教育プログラムの開発研究』 (科研費 (国際学術研究) 報告書) |
| 1997. 3 | 「民間信仰におけるヒンドゥー諸神の位置 −姉崎正治の所論を手がかりに−」 村上真完・磯田煕文『インド哲学と仏教との交渉』 (科研 [基盤B] 報告書) |
| 1997. 3 | 「『もり供養』にみる近年の変化−清水の三森山と寺院行事化現象−」 華園聰麿『東北地方の庶民信仰における『死生観』の実証的研究』 (科研 [基盤B] 報告書) |
| 1998. 3 | 「墓石に見る現代日本人の死生観」 『多民族社会における宗教と文化』No.1 (宮城学院女子大学キリスト教文化研究所) |
主な所属学会
- 日本宗教学会
- 日本民族学会
- 日本民俗学会
- 日本社会学会
- 日本仏教学会
- 印度学宗教学会
- 「宗教と社会」学会
- 朝鮮学会