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『東北大学臨床死生学研究会研究報告』上梓のご案内

 拝啓 短い秋が過ぎ、いよいよ冬の足音が感ぜられるようになった今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

今般、私ども東北大学臨床死生学研究会では、研究報告を刊行致しましたので、ここにお送りいたします。ご笑納賜れば幸甚に存じます。

本研究会は、終末期医療の関係者との交流を通し、医療・介護の現場と人文学との協業を図り、また日本人の死生観を歴史的・文化的に考察することで、現代日本社会の精神構造を明らかにする〈臨床死生学〉の確立をめざし結成されました。2007年には、東北大学若手研究者萌芽研究育成プログラム「医療現場との対話による「臨床死生学」の確立――歴史的・文化的アプローチに基づいた「死生」観研究とそのアーカイブ化」に採択されており、本誌はその研究報告書でもあります。

今日の日本では、「病院死」が80%を越えています。しかし在宅死など病院外での死を希望する人間もこれとほぼ同率で存在しているという事実は、その生を終える場を自身の意志で決定できない社会的・文化的な制約力の存在を示唆しています。本研究会では、このような直面する問題に対して、人文学がいかなる貢献が可能であるかを模索して来ました。本誌では、宮城県白石市と青森県十和田市において主催・共催した二つのシンポジウムを元にした論文等を収録しております。これらのシンポジウムの成功には、仙台を中心に活動するタナトロジー研究会の存在が大きかったです。ここに厚く御礼申し上げます。

これまでの人文学における「死生」観研究は、文学や思想・哲学などの限定された領域で執り行われてきました。もとよりそこに多くの成果があったことは否定できません。しかしその領域の限定性ゆえに、ともすればタコツボ化し、現実の諸問題への還元に困難を伴っていたこともまた事実です。本研究では研究組織を領域横断的に構成し、また臨床の現場にある方々との学的交流を維持することによって、今日を生きるわれわれが直面している現実の問題を見据えた形で研究を展開しようと心がけました。

本研究会はプログラムの終了後も形を変えつつ展開していこうと考えております。今後とも、ご指導ご鞭撻の程をお願い申し上げます。

朝夕寒冷が厳しくなって参りました。呉々も御慈愛下さい。   敬具

『東北大学臨床死生学研究会研究報告』(PDF版)
ファイル 25-1.pdf