リンクは自由!
『月刊言語』第28巻(1999)5月号, pp.88-89 掲載

インターネット言語学情報 第17回 オンライン辞書・語彙検索

後藤 斉


インターネットが広く関心を集める直前はCD-ROMを媒体としたマルチメディアが 話題を集めていた。そのような中で1992年に発売されたOxford English Dictionary第二版の CD-ROMは特に強い印象を与えるものだった。20巻におよぶ大部の辞書が手のひらに載る 12センチの円盤に収まってしまったのだから。しかも、用例中の単語からの検索など、 印刷物では到底不可能な検索手段を提供しており、電子辞書の可能性を大きくアピールし、 実証したものといえる。現在の OEDのウェブサイト (http://www.oed.com/)は、概要の紹介が中心で、あまりインパクトはない。しかし、 予告されている改訂プログラムによれば、1999年10月からオンライン版をウェブ上に公開し、 改訂部分を定期的に加えていくことで、2010年に予定される第三版の刊行に先だって 利用者に新しい形のOEDを提供する計画だという。おそらく有料のサービスになるだろうが、 それにしても、OEDの新しい未来を切り開こうという意欲がうかがえる。

市販の辞書のオンライン・サービスが有料になるのは当然ではあるが、その一方で 同じオックスフォード大学出版局が刊行している Lewis & Short Latin DictionaryLiddell-Scott-Jones Greek Lexicon がPerseus Projectのなかの Text Tools & Lexica (http://www.perseus.tufts.edu/lexica.html)において無料で 一般に公開されていることには驚かざるをえない。もちろん、利用者の層や数に大きな違いが あるだろうが、これを許諾したのは出版社の英断と言えよう。ハイパーテキストの特徴を生かして、 用例から同サイトの本文テキストデータにリンクが張られており、また、解説中の英語から 検索できるという特長もある。

オンライン辞書にも様々な種類があり、データをダウンロードして使うものや 旅行者用単語集風のものも含め、Robert Beard氏の A Web of On-line Dictionaries (http://www.facstaff.bucknell.edu/rbeard/diction.html) は160言語の800のオンライン辞書を挙げている。

日本では、研究社が早くからオンラインの 辞書検索サービス (http://www.kenkyusha.co.jp/online-dic/on-dic1.html) で『新英和・和英中辞典』『リーダーズ+プラス』『新編英和活用大辞典』を提供していた。 また、電子ブックの岩波書店『広辞苑』や三省堂『大辞林』が検索できるサイト (「私の仕事部屋」(http://www.so-net.or.jp/myroom/index.html) もある。

辞書とは異なるが、日本語・日本文学の研究者が主として古典文学作品の オンライン語彙検索サイトを提供しているのも特筆に値する。例えば、万葉集に関しては、 九州帝京短期大学市川毅氏の「万葉集語彙検索」 (http://www.kyu-teikyo.ac.jp/~ichikawa/ltdb/mannyo/index.html)、 山口大学吉村誠氏の「万葉集検索」 (http://dtkws01.ertc.edu.yamaguchi-u.ac.jp/~kokugo/search.html)、 名桜大学波平八郎氏の「日本文学テキスト検索」 (http://www.ics.meio-u.ac.jp/namihira/)があり、 波平氏のサイトでは他に『源氏物語』や宮沢賢治作品などの検索もできる。 なお、バージニア大学・ピッツバーグ大学の 日本語テキストイニシアチブ (http://etext.lib.virginia.edu/japanese/index.html) でも万葉集から森鴎外・与謝野晶子にいたる文学作品の検索が可能である。

プログラムにはバグがつきものであるから、検索の利用にあたっては、利用者のリスクが伴う。 本格的に使うためには、底本を確認するなどの作業は欠かせないだろう。しかし、辞書の場合と 同じく、オンライン検索は印刷物にはない可能性を持っている。

一般公開された無料の検索サイトは、もっぱら提供者の善意に基づいているものであり、 それを利用して得られた恩恵に見合うものをネットワークに還元しようとする姿勢が 利用者には望まれる。

(ごとうひとし/言語学・ロマンス語学)


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