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音声学


概論

人間の言語は第一義的に音声言語である。たしかに文字言語は文明の発達や 現代人の日常生活に不可欠だが、諸民族の歴史からも、幼児の言語修得からも、 音声言語が文字言語に先行しており、より基本的なものであることが分かる。

音声はその発出・伝播・聴取の三つの面から見ることができ、それに応じて、 音声学も調音音声学 (articulatory phonetics)、音響音声学 (acoustic phonetics)、 聴覚音声学 (auditory phonetics) の三部門に分かれる。

調音音声学は、さまざまな音声器官を用いて言語音がどのように 作り出されるかを見る。これは観察が比較的容易であることから最も早く発達した。 特に古代インドの音声学は驚嘆に値する優れたものであった。この影響は 中国を経て日本に伝わり、五十音図を生み出した。現代の音声学は 19世紀末に学問分野として確立されるが、それはまず調音音声学としてであった。 国際音声字母も基本的には調音音声学に基づいている。調音音声学の概念の多くは、 言語学において常識とみなされ、他の分野の研究の理解にも不可欠である。

音響音声学は、空気の振動、すなわち 物理現象としての音声が、どのような性質を持っているかを見る。 この分野は19世紀に始まると言えるが、1941年とされる千葉・梶山の業績を きっかけにして20世紀後半に音声の発生に関する音源フィルター理論が 確立された。種々の測定機械が開発されたが、とりわけ、1990年代以降は パーソナルコンピュータ上で音声を録音・再生・編集・保存し、 音声分析を行うことが容易になったため、文系の言語研究者にも より身近な分野となっている。ただし、音響音声学をきちんと理解するには、 物理学・数学的基礎が必要である。

聴覚音声学は、音声言語の聴取・認識・理解の側面を見る。この分野は 観察や測定が困難であることなどから、近年まで比較的立ち遅れており、 未知の部分が多い。 今後は心理学との連携のもと、脳科学の発展にともない、長足の進歩を遂げることが 期待される。

学会

日本音声学会
催しや学会誌の案内。
日本言語学会
学会誌の目次や大会の案内、お知らせなど。
日本語学会 [旧国語学会]
International Phonetic Association
IPAのチャートやデータ。豊富なリンク集も。
International Phonetic Alphabet
IPA公式ではないが、IPA chart with soundsなど。

有用なサイト

Department of Phonetics and Linguistics, University College London (UCL)
音声学の中心の一つ。フリーウェアの配布も。
Internet Institute for Speech and Hearing
音声言語と聴覚のための仮想情報センター。UCLで配布のフリーウェアの別サイト。Web版あり。Mark Huckvale氏による。
My phonetic blog
John Wells氏(UCL)による。
Speech Internet Dictionary
John Maidment氏(UCL)による。
Jack Windsor Lewis氏
Vowel Diagramsなど。
Institute of Phonetic Sciences, Amsterdam
フリーウェア(praat)・音声コーパスの配布。関連リンク集も。
Department of Speech, Music and Hearing, KTH, Stockholm
フリーウェアの配布も。
Center for Spoken Language Understanding
UCLA Phonetics Lab
声帯の動きのデモなど。
Prof. Peter Ladefoged
UCLAラディフォギッド教授(2006年没)。著書の付録CD-ROMの内容が掲載されている。
Department of Linguistics, UVic
IPAのチャートやHandbookの音声データなど。
Norske språklyder
オンラインで聞けるIPAのサンプル音声。
SIL Software & Fonts
IPA Helpほか。
Online phonetics resources
豊富な音声学リンク集。
TUFSモジュールIPA
東京外国語大学21世紀COEプログラム「言語運用を基盤とする言語情報学拠点」による。
日本語話し言葉コーパス
東京工業大学古井貞煕氏、国立国語研究所、通信総合研究所による日本語の自発音声のデータベース。
音声資源コンソーシアム
音声コーパス(データベース)の調査とカタログ化。
X線映画「日本語の発音」
国立国語研究所の16ミリフィルム映画『X線映画 日本語の発音』のビデオ化。1965-67年。
英語音声学のページ
中央大学牧野武彦氏による。
基礎資料 発声と声帯振動―ファイバースコープを用いた観察―
神戸大学林良子氏らによる科研費研究成果。多くのビデオ映像を公開。
九州大学大学院芸術工学研究院中島研究室
聴覚心理学。聴覚心理学入門や聴覚デモンストレーションなど。
喉頭機能外科
京都大学医学部耳鼻咽喉科学教室一色信彦ほかによる詳細な記述。
カワイサウンド技術・音楽振興財団
研究報告書が読める。
「インターネット言語学情報 第8回 音声学」
後藤、『月刊言語』第27巻(1998)8月号, pp.102-103.
「インターネット言語学情報 第23回 ソフトウェア」
後藤、『月刊言語』第28巻(1999)11月号, pp.86-87.
LIN110 - Phonetics
UCSDの授業の資料。
LIN B09 - Phonetics
トロント大学Daniel Currie Hallさんの授業の資料。 Interactive Sagittal Sectionなど。
fonetiks
いくつかの言語の音声サンプル。
言語の杜
多くの言語のインターネット放送が聞ける。

参考文献

日本語で読める、あまり高度に専門的でないもの。

一色信彦 2006 『声の不思議 診察室からのアプローチ』 中山書店.
医療が中心だが、声の出るしくみや声楽、音響学なども含めて分かりやすくまとめている。
今井邦彦 2007 『ファンダメンタル音声学』 ひつじ書房.
英語音声学に限定されるが、付録のCD-ROMもあわせて、単音、アクセント、イントネーションなどにわたって実践的な知識が得られる。(p.1の図はよろしくない。)
上野善道 2003 『音声・音韻』(朝倉日本語講座 3) 朝倉書店.
日本語を中心に音声・音韻に関する多くの分野の研究動向と展望をまとめている。
音の百科事典編集委員会編 2006 『音の百科事典』 丸善.
ことば以外にも、社会、暮らし、歴史、からだなどを含めさまざまな分野における音を広く扱う中項目の百科事典。
川原繁人 2015 『音とことばのふしぎな世界 ―メイド声から英語の達人まで―』 岩波書店.
音声に関係するさまざまなテーマを読みやすく取り上げている。
ギムスン, A. G. 竹林滋訳 1983 『英語音声学入門』 金星堂.
多少古いが、歴史や地域的変種、外国人への注意なども詳しい。
キャットフォード, J. C. 竹林滋他訳 2006 『実践音声学入門』 大修館書店.
すぐれた一般音声学の入門書。調音の際の音声器官の具体的な動きに詳しい。
小泉保 1996 『音声学入門』 大学書林.
諸言語の例が多い。
国際音声学会編 竹林滋・神山孝夫訳 2003 『国際音声記号ガイドブック』 大修館書店.
IPAによる表記の原理の説明と各言語の実例。
斎藤純男 2006 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂.
日本語に重点をおいた一般音声学入門。良書。
重野 純 2014 『音の世界の心理学』第2版ナカニシヤ出版.
生理学や物理学の基礎にも詳しく、種々の心理学的実験の紹介もある。
城生佰太郎 1992 『音声学 新装増訂三版』アポロン.
カセット付属。別にビデオ教材も。
城生佰太郎 2008 『一般音声学講義』勉誠出版.
著者の音声学への思い入れと薀蓄がこめられている、高度な概説書。
城生佰太郎・福盛貴弘・斎藤純男 2011 『音声学基本事典』勉誠出版.
音声学・音韻論の基本約100項目について、図や写真をまじえて比較的詳しく解説している。
杉浦彩子 2014 『驚異の小器官 耳の科学』 講談社(ブルーバックスY860).
耳の構造と機能をわかりやすく解説。
杉藤美代子 1994-1999 『日本語音声の研究 1〜7』 和泉書院.
7巻の著作集。単音・韻律的特徴・談話など扱う範囲が広い。
田窪行則他 2004 『音声』(言語の科学2) 岩波書店.
言語学的音声学よりはむしろ生物学的基礎から音声合成・認識に詳しい。
竹林滋 1996 『英語音声学』 研究社.
一般音声学も含めた詳細な記述。
竹林滋・斎藤弘子 2008 『新装版 英語音声学入門』 大修館書店.
信頼できる入門書。CD付き。
Titze, Ingo R.著 新美成二監訳 2003 『音声生成の科学 ―発声とその障害』 医歯薬出版.
音声生成の生理学的側面に詳しい。
パーマー, ジョン M. 三田地真実監訳 2001 『ことばと聞こえの解剖学』 学苑社.
音声器官の部位の名称と機能に詳しい。
萩野仁志・後野仁彦 2004 『「医師」と「声楽家」が解き明かす発声のメカニズム』 音楽之友社.
声楽向けだが、さまざまな声帯の写真が印象的。
服部四郎 1984 『音声学』 岩波書店.
カセット付属。諸言語や日本語諸方言の音声にも詳しいが難解な面も。記念碑的著作。
福盛貴弘 2010 『基礎からの日本語音声学』 東京堂出版.
音声学の基本的な考え方を教えてくれる。
藤村靖 2007 『音声科学原論―言語の本質を考える』 岩波書店.
音声現象としての言語の本質に関する著者の研究の集成。
プラム, ジェフリー K., ウィリアム A. ラデュザー 2003 『世界音声記号辞典』 三省堂.
IPAほかでの記号の使い方とその呼び名がわかる。
村上由美 2009 『声と話し方のトレーニング』 平凡社(平凡社新書 454).
言語聴覚士としての専門的知識に基づいた記述。
山田恒夫他 2005 『XP対応 英語スピーキング科学的上達法』 講談社(ブルーバックス B1486).
豊富なMRI画像が印象的。ただし、(少なくとも第1刷では)p.95に重大な誤りがある。ソフトウェア付属。
湯澤質幸・松崎寛 2004 『音声・音韻探究法―日本語音声へのいざない―』 (シリーズ「日本語探究法) 朝倉書店.
音声に関する言語学的な考察を、思考の筋道に沿ってわかりやすく解説し、さらなる探究へいざなう読みやすい教科書。
ライアルズ, ジャック., 今富摂子他監訳 2003 『音声知覚の基礎』 海文堂.
音声知覚に関してわかりやすい入門書。
ラディフォギッド, P. 1999 『音声学概説』 大修館.
原書は定評のある概説書。
Raphael, L. J., G. L. Borden, & K. S. Harris 廣瀬肇訳 2008 『新 ことばの科学入門 第2版』 医学書院.
音響学、音声言語の生成知覚を幅広く扱う。原著第5版の翻訳。良書だが、高価。サポートサイト「耳で聞く資料集」あり。
「特集 言語音声の科学」 『月刊言語』 第31巻(2002) No. 11 (10月号).
様々な分野の寄稿者による。基本的なものも専門的なものもあり、体系的ではない。

音声学講義資料
音響音声学
毎日新聞英文サイトWaiWaiコラムの不適切記事問題
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2016-10-06T14:13:32+09:00
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