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『エスペラント』(La Revuo Orienta) 第80巻(2012)7月号, pp.20-21. 掲載

de vorto al vorto (31) ligi

後藤 斉


動詞ligiは『エス日』で「つなぐ」や「縛る」などの訳語が与えられています。語義を細分して動詞型を示していますが、この単語の使い方は多岐にわたるので、網羅的に挙げているわけではありません。

この単語の最も具体的な語義は、ひも状のものを結ぶことです。しかし、大抵の場合にはそれ以外の物や場所も関わっています。ひも状の物を結ぶことによって、ある物を別の物に接合すること、ないしある物を動かないようにすることを含んでいるようです。

関与する物は表現としてはいろいろな形で反映されます。ligi la ŝulaĉo(j)n「靴ひもを結ぶ」は表現としてこれで完結していて、靴ひもだけが関与しているようにも見えます。当然ながら、普通の状況では履いた靴が足から脱げないように固定することを含んでいます。靴ひもの機能は限定されていますから、表現には現れなくとも了解できるわけです。

ligi ŝnuron「ロープ[ひも]を結ぶ」では、ロープにはいろいろな使い方がありえるため、この表現だけでは状況がよく伝わりません。ただ、特定の状況の中で話し手と聞き手が特定の使い方を了解できるのであれば、使うこともできるでしょう。

ある物語の中で、"Helpu min ligi la ŝnuron."というせりふがありました。自動車が故障して困っているという状況を考えれば、「牽引ロープを故障車ともう一台の自動車につなぐのを手伝ってくれ」ということだとわかります。この場面では、この表現で十分でしょう。

何につなぐかを、表現としても明示したい場合もあります。ligi ŝnuron al stango「ひもを棒に結ぶ」などです。巻いてから結ぶさまを表すには前置詞ĉirkaŭが使えます。ligi ŝnuron ĉirkaŭ la talion「ロープを腰の周りに結ぶ」などです。この場合、移動があると捉えてĉirkaŭに続く名詞を対格にすることが多いようです。

上の例では、ひも状の物が目的語になっていましたが、対象物に関心があるときはそれが目的語として表されます。ligi bukedon「花束を束ねる」、ligi suspektaton「容疑者を縛る」などです。ligi la buŝon de sako「袋の口を結ぶ」はligi sakonとだけ言うこともあるようです。

ひもなどを表現に現わさないことも多いようですが、必要があればper ŝnuro [drato / ĉeno]「ロープ[針金/鎖]で」などと補足することになります。人を主語にして言うことが普通ですが、Dika ŝnuro ligis la pakaĵon.「太いひもが包みを縛った」のように、ひもを主語にする言い方も可能です。

何を何につなぐかを、明示したい場合もよくあります。ligi ŝipon al kajo「船を桟橋につなぐ」などです。動きそうな物をしっかりした物に固定するという状況で使うことが多く、つなぐ先を表す名詞には前置詞alを使うのが最も適切です。ligi kajon al ŝipoには違和感がありますが、ligi hundon al ŝnuroとligi ŝnuron al hundoとは、視点の違いはあるものの、表現としてどちらも可能でしょう。

前置詞がalに限られるわけではありません。つなぐ場所を明示すればいいので、ligi hundon ĉe la pordo「犬をドアのところにつなぐ」のように、伝えたいことに応じて変わってきます。

関与するのはひもやロープのような分かりやすいものに限られません。ligi ekranon al komputiloでは所定のケーブルでつなぎます。La fervojo ligas la urbon N kun la urbo K.「鉄道がN市をK市とつないでいる」のよう交通路についてもligiが使えます。ケーブルや交通路では、単に物理的につなげただけでなく、電気信号や人の行き来という連携の関係が生じることも含んでいます。なお、最後の例では前置詞alを使うこともできますが、二つの地点を同等に捉えている場合はkunの方が適切でしょう。... ligas la urbon N kaj la urbon Kのように、kajでつないで両方を目的語にして表現することもできます。

さらに抽象的なつながりにも広がります。ligi amikajn rilatojn kun iu「<人と>友好的な関係を結ぶ」、Japanio ligis diplomatiajn rilatojn kun Finnlando en 1919.「日本は1919年にフィンランドと外交関係を結んだ」のように「関係」を意味する単語を目的語にすることもあります。ligi aliancon「同盟関係を結ぶ」、ligi kontaktojn kun iu「<人と>コンタクトを取る」もこれに近いでしょう。

Malnova kutimo ŝin ligis al la hejmo.では、「固定する」の含みが強く現れています。一方、La sama idealo ligas ilin.やNi estas forte ligitaj per amikeco.のように「結びつける」の含みが強く出ることもあります。

さらに抽象的には、ものやことをさまざまに関連づける(関連づけて捉える)ことを指して使われます。ligi lingvon kun kulturo「言語を文化と関係づけて捉える」、Oni emis ligi historion kun regantoj.「歴史というものを支配者と結びつけがちだった」など。La kunsido ne estas rekte ligita al Esperanto.「会合は直接エスペラントにつながるものではない」やLa prezo de la varo estas ligita al la prezo de nafto.「商品の価格は原油価格とリンクしている」、zorgoj ligitaj al medidetruado「環境破壊に関係した懸念」のように受身で使うこともよくあります。

名詞のligoの実例の大多数は「同盟, 連盟」の語義で使われているのですが、「結びつき」の語義でももちろん使われます。強めるにはrekta, densa, forta, firmaなどの形容詞が適当でしょう。La asocio establis fortajn ligojn kun jxurnalistoj.「協会はジャーナリストと強いコネを築いた」、La foto ne havas ajnan ligon al la teksto.「写真は本文と何のつながりもない」など、他動詞establi, haviや、さらにteni, perdiなどと一緒に使いやすいでしょう。

en ligo kun la kongresa temo「大会テーマに関連して」のようなつながりもニュースや論説文でよく見られますが、むしろlige kun [al] la temo「テーマに関連して」、lige kun la 50-jariĝo「50周年にちなんで」のように副詞形にすることが多いようです。

「つなぐ」の語義をはっきりさせるため、interligi, kunligi, alligiと、前置詞を接頭辞的に加えた派生語として使うこともよくあります。malligiは、「ほどく,縛りを解く」の意味で使われますが、抽象的な語義ではほとんど使われていません。


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