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エスペラントを育てた人々
―仙台での歴史から―


エスペラントのことを「ザメンホフが作った人工語」と いうことがあります。しかし、社会現象としての言語を一人の人が作ることはできません。 エスペラントの場合、自らの意思によってそれを学習し、使う人々の集団、すなわち エスペラントの言語共同体が存在して初めて、言語が成り立つことができます。この意味で、 エスペランティストの一人一人がエスペラントの成立と発展に関わっているのです。

したがって、エスペラントをより適切に捉えた言い方としては、ザメンホフがエスペラントを 提唱して、エスペランティスト(もちろんザメンホフ自身を含む)がそれを育てた、ということに なるでしょう。エスペランティストのうち、組織を指導した人、あるいは他の分野で名を揚げて 世間的な知名度の高い人などのことは思い浮かべやすいものであって、そのような人は確かに 相応の敬意を払われてしかるべきはあるでしょう。

しかし、エスペラントを育てたのは決してそのような人ばかりではありません。 言語としてのエスペラントの成立にとっては、エスペラントに関してなにかをなした人 より、むしろ、エスペラントを使ってなにかをなした人の方が、はるかに重要です。 その中でもエスペラントで大著をなした人の名前は残りやすいものですが、数からすれば、 歴史の表舞台には登場しないけれども地道にエスペラントを使った人々の方が多いのです。 そのような人々こそが、エスペラントを育てた人々なのだと言えます。

ここでは、そのような、エスペラントを草の根で育てた人々を取り上げてみようと思います。 この人たちは、人名事典に載る、また、時代をリードしたと言える英雄や有名人ではありません。 いわゆる市井の人々にすぎません。それでも、彼らは、その時代と地域の与える条件のなかで、 精一杯に生き、それぞれの関心に従ってエスペラントを使って、国際交流を実践し、また自らの 人生を彩りあるものにしました。そして、その活動によって生きた言語としてのエスペラントを 育て、エスペラントを豊かにしたのです。

ここでの叙述は、仙台での歴史が中心になります。もちろん、そのような人々は仙台だけに いた訳ではありません。仙台に特に多かったとも言えないでしょう。仙台を中心にするのは、 あくまで筆者の側で調査がしやすいという理由によることです。

1920〜30年代の歴史を取り上げるのは、この時代が一まとまりになっていることのほかに、 当事者と関係者のほぼ全てが物故されていてプライバシーの問題が発生しにくく、著作権の 観点からも資料の取り扱いが比較的容易だという事情によります。

仙台エスペラント会にはこの時代の会報、事務ノート、会合の出席記録ノート、チラシ類 などの資料がいくらか残されています。戦争の時期を含めて70〜80年も隔てた時代の市民の活動の 原資料がまとまって保存されている事例は、他にはそれほど多くないのではないでしょうか。 これらが現存するのは、菅原慶一、菊沢季生、金子美雄らの先人の配慮のおかげと言えます。

さらに、可能な範囲で他の資料ともつきあわせることで、叙述全体としては、それぞれの人の 活動をできるだけ当時のエスペラント運動全体や社会状況全体の中に位置づけられるよう 試みたいと思います。

しかし、残されたものが同時代の資料のうち一部にすぎないことも事実です。名前は伝わる ものの、残念ながら、その経歴や活動ぶりがよく分からないような人物は少なくありません。 また、資料である程度はたどれる活動であっても、その意図や実態、影響、反応などの詳細に ついては推測に頼らざるをえないという事例もあります。

ですから、ここで取り上げることのできるのは、どうしても、実際にエスペラントを育てた 人々のうちの一部でしかありません。しかも、その人の活動の特定の面に限定されることに なってしまいます。エスペラントを育てた人々は、ここで扱うことのできた人に限られるの ではありません。仙台以外の日本の他の地域はもちろん、世界各地にもいました。現在も 多くの人々がエスペラントを生きた言語へとさらに育てているのです。

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このサイトの内容は、後藤斉著『エスペラントを育てた人々』(創栄出版, 2008)の改訂増補版に相当します。


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