若者よ,学びの杜へ

 本当の〈師〉は自分で探しあてるものですが,社会学に関しては,とくに環境社会学や社会運動論に関しては,君自身が師とめぐりあうための地図づくりの一助となることはできるでしょう。参考・師を見つける旅LinkIcon

──大学院で学びたい君へ──

大学院「出願」の前になすべきこと

 2020年4月から,東北大学を定年退職し,尚絅学院大学大学院に特任教授として着任したことにともなって,以下の注意もアップデートしました。熟読の上,メイルでご連絡ください。

問い合わせの際には,あらかじめ,次の問いにお答えください。LinkIcon
事前に,十分な情報収集を

 時間をつくって研究室をたずねて,入試や大学院生活について十分な情報を集めてください。研究室の雰囲気を知ることはとても大事なことです。
 試験当日や前日にはじめて研究室に来るという大胆な受験者もいます(こういう方はメッタに合格したことはありません)。是非出願に先立って,研究室をたずねて,十二分に相談してください。

「ブランド」で大学院選びをしてはいけません

 大学院を選ぶにあたってもっとも大事なことは,自分の研究したいと思うテーマに関して指導を仰ぐのにふさわしい先生が,その大学院にいるかどうかです。しかし現実には,どうも「何となく」有名大学院にしたとか,漠然と現在の先生にすすめられたというような程度で,受験する人が少なくありません。
 研究関心が十分絞り切れないというような場合もありえますが,大学院でどういう研究をしたいのかがはっきりしていなければ,こちら側も受け入れることは困難です。
 またとにかく有名大学院や大学受験時の偏差値の高い大学院をめざそうという考え方も,誤りです。その大学院の専攻にあなたが研究したい分野の先生がいるかどうかこそが,出発点です。

スタッフの主要な論文や著書などにあらかじめ眼をとおしてください

尚絅学院大学大学院の場合

 社会学およびその関連分野はとても充実しています。長谷川だけでなく,それぞれの代表的な論文や著書などに,あらかじめ眼をとおしたうえで本大学院を考えてください。心理学や哲学関係,宗教学などにも優れたスタッフがそろっています。

長谷川の指導できるテーマ

 長谷川の場合には,おもに環境社会学や社会運動,NGO・NPO,市民社会論などについて指導します。

環境社会学・社会運動論は日本のどこの大学院で学べるか?

 日本では残念ながら,研究者養成に重点をおく社会学の大学院で,環境社会学兵庫県豊岡市コウノトリ 2007. Juneや社会運動の研究を専門的にテーマとするスタッフがいるところは,あまりありません。環境社会学の場合には研究者養成に実績がある大学院は,北から順にあげると,北海道大学(宮内泰介先生),法政大学(池田寛二先生・堀川三郎先生),早稲田大学(井上真先生),名古屋大学(立川雅司先生・丸山康司先生・青木聡子先生)などに限られます。社会運動の場合にも,一橋大学(町村敬志先生),中央大学(野宮大志郎先生),名古屋大学(青木聡子先生)などに限られてきます(2021年5月現在,在職中の先生に限りました)。

長谷川の具体的な研究内容

 長谷川自身は,現在は,環境社会学では,(1)環境社会学の理論化,(2)原子力・エネルギー問題,(3)地域の内発的発展,などの問題に関心をもっています。社会運動に関しては,(4)資源動員論や新しい社会運動論,政治的機会構造論,フレーミング分析などの社会運動論の主要な系譜の統合と体系化,(5)政府・行政,産業界などとのコラボレーションによる政策転換の可能性,(6)住民自治と市民参加,などの問題に関心をもっています。『環境運動と新しい公共圏――環境社会学のパースペクティブ』(2003年4月,有斐閣刊)は,これまでの私の研究をまとめたものです。まず同書を熟読ください。


指導方針

 指導にあたって,とくに以下の点を重視しています。参考LinkIcon
 1)研究のモティべーションを高めること
 2)院生個々人の研究関心・個性・伸びしろを重視した指導
 3)現実と理論との往還,理論的志向性と実証的志向性とのバランス
 4)国際舞台での研究と発信
 5)発見的・創造的で,批判的な研究

指導の実績

 これまで主査として実質的に指導した課程博士論文と執筆者の現職は次のとおりです。学位取得者は、東北大学に在任した2019年度までで9人のみですが、1全員、3年ないし4年程度で高いレベルの博士論文を書いています。2)そのうち6冊は単著として刊行され、2冊は学会賞を受賞するなど、いずれも高い評価を得ています。3)全員,日本学術振興会の特別研究員を経ています。4)比較的順調に研究職に就職できています。少数精鋭ですが、日本の社会学界では相当程度高い指導打率と思います。長谷川の指導の仕方・人間像などについては、元院生の方達による「長谷川ゼミOB/OG座談会(2019年8月)」『カタクリの杜をいく』pp.59-65.『カタクリの杜をいく』ほかをご覧ください

指導を受けた元院生5名からのメッセージLinkIcon

  • 李 妍(現在,駒澤大学文学部教授)LinkIcon,『ボランタリー活動の成立と展開――日本と中国における事例研究から』(2000年3月学位取得,2002年3月『ボランタリー活動の成立と展開――日本と中国におけるボランタリー・セクターの論理と可能性』ミネルヴァ書房として刊行,第1回日本NPO学会研究奨励賞・第2回生協総研「研究賞」受賞). 『中国の市民社会』岩波新書(2012年), 『下から構築される中国』明石書店(2018年)ほか.
  • 帯谷 博明(現在,甲南大学文学部教授)LinkIcon, 『河川政策の変遷と環境運動の展開――対立から協働・再生への展望』(2003年3月学位取得,2004年10月『ダム建設をめぐる環境運動と地域再生』昭和堂として刊行).『水環境ガバナンスの社会学――開発・災害・市民参加』昭和堂(2021年2月)ほか.
  • 本郷 正武(現在,桃山学院大学社会学部准教授)LinkIcon, 『「良心的支持者」概念の理論的展開 ―― HIV/AIDSをめぐる集合行為のフレーミング分析』(2004年3月学位取得,第2回東北大学総長賞受賞,2007年3月『HIV/AIDSをめぐる集合行為の社会学』ミネルヴァ書房として刊行)
  • 青木 聡子 (現在,名古屋大学大学院環境学研究科准教授)LinkIcon, 『ドイツにおける原子力施設反対運動の展開過程――環境指向型社会へのイニシアティヴ』(2006年3月学位取得)。2013年10月『ドイツにおける原子力施設反対運動の展開――環境志向型社会へのイニシアティヴ』ミネルヴァ書房として刊行,2013年度日本ドイツ学会奨励賞受賞LinkIcon
  • 土田 久美子 (現在,駒澤大学文学部講師)LinkIcon, 『日系アメリカ人リドレス運動の展開過程――集合的アイデンティティと制度形成』(2009年3月学位取得)
  • 板倉 有紀 (現在,福島大学行政政策学類准教授)LinkIcon, 『ヴァルネラビリティとケアの社会学――自然災害における女性・地域・保健』(2014年3月学位取得), 2018年11月『災害・支援・ケアの社会学――地域保健とジェンダーの視点から』生活書院として刊行.
  • 大井 慈郎 (現在,岩手保健医療大学看護学部講師)LinkIcon, 『「構造化された人口移動」論とインドネシア首都郊外の拡大――東南アジア都市化論の再構築をめざして』(2015年3月学位取得).「郊外工場労働者の向都市移動と就業形態―インドネシア首都郊外工業団地周辺集落部アパート群調査より」『社会学年報』48:163-174.論文により東北社会学会第3回研究奨励賞受賞.
  • 小杉 亮子(現在,埼玉大学大学院人文社会科学研究科准教授)LinkIcon, 『1960年代学生運動の形成と展開―生活史にもとづく参加者の政治的志向性の分析』(2016年3月学位取得), 2018年5月『東大闘争の語り――社会運動の予示と戦略』新曜社として刊行.
  • 中川 恵 (現在,米沢女子短期大学社会情報学科准教授)LinkIcon, 『食をめぐる生産者・消費者関係の現代的再構築――日本版CSAモデルの課題と展開』(2016年3月学位取得)

1999年3月9日第1版,2015年5月25日第8版,2021年5月7日第9版