木村邦博 2006年度の授業のシラバス (Last Updated 12/11/06)

(注)東北大学では、セメスターに次のような番号をつけている(学部・大学院それぞれ)。

4-9月 10-3月
1年次   1   2
2年次   3   4
3年次   5   6
4年次   7   8


計量行動科学研究演習II/行動科学演習
「階層・階級とジェンダー・家族・階層意識の計量分析」
(大学院博士前期課程向け第1セメスター/3・4年生向け第5・7セメスター 月曜日 13:00-14:30)

1. 基本方針
 階層・階級とジェンダー・家族・階層意識などとの絡み合いについて、主に計量社会学的な方法(より一般的に言えば計量行動科学的方法)でアプローチした研究を取り上げ、検討する。特に、Wright (2000) の Part 2, Part 3 (Wright (1997) の Part 3, Part 4)を中心に、関連した英語文献も読んでいく。(これらは、日本を含めた国際的な社会調査のデータに多変量解析を適用し、その分析結果を理論的考察と結びつけている点で、先行研究として定評のあるものである。)このことを通して、階層・階級とジェンダー・家族・階層意識などとの絡み合いに関する行動科学的研究の動向を学び、今後どのような研究が必要かを検討する。同時に、学術的な英語文献の読解力、行動科学的思考法、多変量解析(重回帰分析・ロジスティック回帰分析・トービット回帰分析・多変量分散分析など)の基本的手法を身につけることを目指す。
 なお、学部生の場合、第6セメスターの行動科学演習「階層意識の計量分析」をあわせて履修することが望ましい。
 また、大学院生の場合、この科目は専門社会調査士資格認定科目Iに対応しており、COE授業科目を兼ねている。

2. 教科書・参考文献
【教科書】

【参考文献(木村の観点からみて主なもの;ほかにもまだまだある)】
(1) 階層・階級とジェンダー・家族・階層意識などに関するもの
(2) 教科書で使われている多変量解析の手法に関するもの

3. 授業の進め方
(1) 教科書 (Wright 1997; 2000) の指定された章を取り上げ、内容の把握、疑問・問題点の指摘と討論を行う。ひとつの章につき(参加者数、長さや内容などに応じて)1〜3名の担当者を割り当て、内容と問題点などに関する報告をしてもらう。ひとつの章を複数名で担当する場合、機械的に分担してしまうのでなく、章全体の内容を担当者全員が把握し、各回の報告がつながるように、共同で勉強や報告の準備を行うこと。
(2) 学部生の場合、広く階層・階級とジェンダーや家族、階級・階層意識に関するその他の先行研究(教科書に引用されているものや、上の参考文献リストに挙げたもの、各自が文献検索をして見つけたものなど)も参照しつつ、問題・課題の明確化を図る。大学院生の場合には、さらに、このテーマに関してどのような計量的研究が行われているかを調べるとともに自分が利用可能な調査データで追試や展開を試みてみるとよいだろう。
(3) 学部3年生の場合、以上の考察を踏まえ、今後の研究の展望を考え、行動科学研究室で利用可能な社会調査データ(SSM調査、高校生調査、静岡女性調査など)を用いた追試を企画する。(第6セメスターの行動科学演習「階層意識の計量分析」で、実際に追試を行ってみることになる。)これが、受講生諸君の卒業研究・卒業論文につながることを期待している。
(4) 学部4年生に関しては、自分の卒業研究・卒業論文との関連を意識し、随時、卒業研究・卒業論文の進行状況報告をしていただきたい。大学院生からは先輩としてのアドバイスを期待したい。学部3年生には、学部4年生の姿を手本として自分の卒業研究・卒業論文について考える機会としていただきたい。


4. スケジュール(予定)

───────────────────────────────────────
 回  月/日         内容                                                  担当
───────────────────────────────────────
      4/10    (木村が海外出張中のため休講)
  1     17    授業計画の説明
  2     24    研究報告(4年生)
      5/ 1    (休講予定)
  3   5/ 8     6  Conceptualizing the interaction of class and gender
  4     15     7  Individuals, families and class analysis (pp.125-134)
  5     22     7  Individuals, families and class analysis (pp.134-145)
  6     29     8  The noneffects of class on the gendered division of
                  labor in the home
  7   6/ 5     9  The gender gap in workplace authority (pp.159-168)
  8     12     9  The gender gap in workplace authority (pp.168-182)
  9     19    10  A general framework for studying class consciousness
                  and class formation (pp.185-198)
 10     26    10  A general framework for studying class consciousness
                  and class formation (pp.199-215)
 11   7/ 3    研究報告(4年生)
 12     10    11  Class consciousness and class formation in Sweden,
                  the United States and Japan (pp.216-224)
 13     24    11  Class consciousness and class formation in Sweden,
                  the United States and Japan (pp.224-233)
 14     31    11  Class consciousness and class formation in Sweden,
                  the United States and Japan (pp.234-247)
───────────────────────────────────────
  *「内容」欄の章番号・題目・頁は、Wright (2000) による。大学院生の場合は
    Wright (1997) の対応箇所を読んでおくこと。
  *内容・日程については、参加者数などに応じて変更することもある。

5. レポート課題
5.1 課題
(1) 学部学生の場合
 自分が担当した章(のうちひとつ)について、(もちろん他の章や他の文献との関係を意識しながら)内容の要約とコメントを行う。ただし、そのコメントは、今後(自分や他の人が)どのような研究をしていけばよいのか、ということを考える上で建設的なものであること。(この課題に取り組むことで、既存の研究をもとに自分がどのように研究を展開していけばよいのか、というイメージをつかんでいただければ幸いである。)
(2) 大学院生の場合
 「2. 教科書・参考書」の「参考文献(主なもの)」にあげたものや自分で検索した関連文献のうち、英語で書かれた文献(邦訳のあるものを除く)をひとつ(階層・階級・ジェンダー・家族と階層意識に関連する部分に限る;編著の場合は全体でなく収録論文ひとつでもよい)を選び、その紹介を行うとともに、それがこれまでの研究の歴史の中で持っている意味と、今後の研究の展開にとって持つ意義について考察する。(もちろん、執筆の過程で他の文献を参照することはかまわないし、むしろ推奨したい。)さらに、できる限り、自分が利用可能な調査データで追試や展開を試みてみる。
5.2 書式
 ワープロを使用し、A4判の上質紙に横書きで印字する。『行動科学研究マニュアル』の「卒研報告・修士論文執筆要項」に準じた書式とする。具体的には、A4判の紙に30行×35〜40字(全角)で印字(横書き)。ただし、マージンは上・下30mm、左・右25mmとする。この書式で4枚以上6枚以内とする(引用文献リスト・図表を含む)。(少々長くなる分にはかまわないが、冗長になりすぎるのも問題なので、一応この枚数を目安とする。)
 レポートの冒頭には、タイトル、学籍番号・氏名、提出日を記しておく。また、ページ番号をふっておくこと。
5.3 提出期限と提出場所
 2006年8月28日(月)まで。行動科学分析室にある(スタッフへの配布物用の)レターケースの木村の棚に入れる。

6. その他
6.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする。
6.2 成績評価
 成績は、レポートと、出席や議論への参加の状況とにより、総合的に判断する。
6.3 夏休みにしておいてほしいこと
 (学部生が第6セメスターの行動科学演習「階層意識の計量分析」を履修する場合)
 第6セメスターの行動科学演習「階層意識の計量分析」を履修する意思のある人は、夏休み中に、階層・階級、ジェンダー、家族などと階層意識に関する文献を自分で検索し、興味を持ったものを読み、利用可能な社会調査データを用いて先行研究の知見を追試するにはどのようにすればよいか、あらかじめ予備的な検討をしておいてほしい。さらに、それと自分自身の卒業研究・卒業論文の構想とがどのように関連するかについても、考えてほしい。
もちろん、夏休み中でも随時相談に乗るので、分からないことなどがあれば、木村の研究室に(アポイントメントを取った上で)来ていただければ幸いである。


計量行動科学研究演習III
「社会調査法への認知科学的アプローチ」
(大学院博士前期課程向け;第2セメスター 水曜日 10:30-12:00)

1. 基本方針
 近年、認知科学・認知心理学の方法や成果をもとに、社会調査法に反省・検討を加ようという試みが行われるようになってきた。そのひとつの流れが、教科書として取り上げるSirken, et al. (1999) などの CASM (Cognitive Aspects of Survey Methodology) である。このような研究動向についてレビューするとともに、そこでの知見を社会調査の現場(企画・準備・実査から成果報告に至るまでのプロセス)に実践的に活かす道を探究する。あわせて、このアプローチから調査者−被調査者関係に関してどのような洞察が得られ、それが社会調査の倫理の問題について考える際にどのように役立つかも検討する。

2. 教科書・参考書
2.1 教科書

2.2 主な参考書
  • 池田謙一. 2000. 『コミュニケーション』(社会科学の理論とモデル 5) 東京大学出版会.
  • 井上毅・佐藤浩一 (編著). 2002. 『日常認知の心理学』 北大路書房.
  • Johnson-Laird, Philip N. 1983. Mental Models: Towards a Cognitive Science of Language, Inference, and Consciousness. Cambridge, Massachusetts: Harvard University Press. 海保博之監修(AIUEO訳) 『メンタルモデル−言語・推論・意識の認知科学−』 産業図書 1988.
  • 守一雄・都築誉史・楠見孝 (編著). 2001. 『コネクショニストモデルと心理学−脳のシミュレーションによる心の理解−』 北大路書房.
  • 日本認知科学会 (編). 2002. 『認知科学辞典』共立出版.
  • Pylyshyn, Zenon W. 1985. Computation and Cognition: Toward a Foundation for Cognitive Science, 2nd ed. Cambridge, Massachusetts: MIT Press. 佐伯胖監訳(信原幸弘訳) 『認知科学の計算理論』 産業図書 1988.
  • Thagard, Paul. 1996. Mind: Introduction to Cognitive Science. Cambridge, Massachusetts: MIT Press. 松原仁監訳(梅田聡ほか訳) 『マインド−認知科学入門−』 共立出版 1999.

3. 授業の進め方
 教科書のうち、Chaps. 6, 7, 8, 9, 10, 13, 15, 16, 19, 20 を取り上げて、内容の把握、疑問・問題点の指摘と討論を行う。ひとつの章につき1人の報告者が報告する。他の参加者も事前にその章を読んでおき、質問・コメントを行う。その上で、全員で討論する。
 以上の討論を踏まえ、社会調査の方法をどのように向上させていけばよいかについて、ともに考えて行きたい。


4. スケジュール

────────────────────────────────────────
 回 月/日             内容(テキストの章)                              担当
────────────────────────────────────────
    10/ 4  (行動科学集中講義のため休講)
  1    11  授業計画の説明、担当の決定
       18  報告の準備・相談
  2    25   6. Making Sense of Questions: An Interactional Approach
  3 11/ 1 「調査における倫理的配慮」(人文社会科学研究「研究と実践の倫
           理」の授業を兼ね、313教室で実施)
  4     8   7. The Respondent's Confession: Autobiographical Memory in
               the Context of Surveys
  5    15   8. Context Effects on Answers to Attitude Questions
  6    22   9. Is the Bandwagon Headed to the Methodological Promised
               Land? Evaluating the Validity of Cognitive Interviewing
               Techniques
  7    29  10. Income Reporting in Surveys: Cognitive Issues and
               Measurement Error
    12/ 6  (行動科学集中講義のため休講)
  8    13 13. The Use of Computational Cognitive Models to Improve
               Questions on Surveys and Questionaires
  9    20 15. Survey Error Models and Cognitive Theories of Response
               Behavior
 10  1/10  16. New Connectionist Models of Mental Representation:
               Implications for Survey Research
 11    17  19. Customizing Survey Procedures to Reduce Mesurement Error
 12    24  20. Visualizing Categorical Data
───────────────────────────────────────
 *参加者の人数に応じて、取り上げる章やスケジュールを変更することがある。

5. レポート課題
5.1 課題
 自分の担当した章のうちひとつについて、授業時間での討論を活かして、その内容を紹介するとともに、コメントを加えた文章を作成する。
5.2 書式
 ワープロを使用し、A4判の上質紙に横書きで印字する。『行動科学研究マニュアル』の「卒研報告・修士論文執筆要項」に準じた書式とする。具体的には、A4判の紙に30行×35〜40字(全角)で印字(横書き)。ただし、マージンは上・下30mm、左・右25mmとする。この書式で5枚以上8枚以内とする(引用文献リスト・図表を含む)。(少々長くなる分にはかまわないが、冗長になりすぎるのも問題なので、一応この枚数を目安とする。)
 レポートの冒頭には、タイトル、学籍番号・氏名、提出日を記しておく。また、ページ番号をふっておくこと。
5.3 提出期限と提出場所
 2007年2月5日(月)まで。行動科学分析室にある(スタッフへの配布物用の)レターケースの木村の棚に入れる。

6. その他
6.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする。
6.2 成績評価
 成績は期末レポートおよび授業での活動をもとに総合的に評価する。


行動科学各論
「行動科学方法論の諸問題:エピソードから学ぶ」
(3・4年生向け第6・8セメスター 木曜日 10:30-12:00)

1. 基本方針
 この講義のアイディアの源流となっているのは、ロゲルギストの『物理の散歩道』シリーズ(岩波書店 1963-1972;中央公論社 1974-1983)や、それにならった野口悠紀雄『経済学の散歩道』(日本評論社 1985)である。これらの行動科学版あるいは社会学版となるようなもの(いわば『行動科学の散歩道』あるいは『社会学の散歩道』)を作ることが、私の長年の願いであった。さらに、寺田寅彦・中谷宇吉郎の随筆集(『寺田寅彦随筆集』岩波書店 1963-1964;『中谷宇吉郎随筆集』岩波書店 1988)、ホフスタッター(Hofstadter, Douglas R.)の『メタマジック・ゲーム』(白揚社 1990)、スマリヤン(Smullyan, Raymond M.)の『哲学ファンタジー』(丸善 1995)などの本の内容やスタイルからもインスピレーションを得ている。
 このようなアイディアをもとに執筆したのが、拙著『日常生活のクリティカル・シンキング−社会学的アプローチ−』である。この本は、(不遜かもしれないが)行動科学・社会学を学ぶ人に対してひとつの「手本」を示すとともに、行動科学・社会学専攻以外の人には(特に心理学・経済学・政治学などの比較的近い専門分野の人だけでなく自然科学系の専攻の人にも)「こういう見方もできるのか」と思ってもらえるような、やわらかいお話を集めたものとして企画したものである。内容としては、日常の疑問に対する行動科学的・社会学的分析の応用、社会調査・データ分析のノウハウ、理論構築の方法、などが中心になっている。
 講義では、この拙著の各章をもとに受講生の皆さんと議論ができればと願っている。さらに、この本に盛り込めなかった話題についても提供し、それに関しても同様に議論ができればと考えている。(現在のところ、リサイクル問題における意思決定とその正当化に関する私自身の共同研究に関する話題を考えている。)
 なお、受講生は、行動科学概論を履修していることが望ましい。

2. 教科書・参考書
【教科書】

【参考書】
  • 小林淳一・木村邦博(編著). 1991. 『考える社会学』 ミネルヴァ書房.

3. 授業の進め方
 まず、教科書の検討にはいる前に、ウォーミングアップとして、参考書の小林・木村 (1991) の「イントロダクション」に挙げられている例について考察する。その後で、教科書の1章につき1回のペースで、その内容に関する補足説明と討論を行う。さらに、教科書に盛り込めなかった話題に関しては、木村が共同研究者とともに作成した文章を授業の1週間前までに配布して提供する。いずれにせよ、受講生の皆さんには、次回に取り上げる章や資料を事前に読んだ上で、授業に出席し、授業の内容について積極的に質問・コメント・提言をしていただきたい。
 この各論で取り上げる話や授業中の討論などから、受講生の皆さんの卒業研究・卒業論文につながるヒントを得ていただければ幸いである。


4. スケジュール(予定)

────────────────────────────────────────
 回  月/日         内容(予定)
────────────────────────────────────────
  1  10/ 5    授業計画の説明(「プロローグ:道案内をかねて」を含む)
  2     12    「席取り」はなぜ起こるのか[小林・木村 (1991) より]
  3     19    スポーツのルールはなぜ変わるのか:
         あるいはなぜ自国選手に不利に変わるように見えるのか
  4     26    血液型性格学はなぜはやるのか:疑似科学を信じるメカニズム
     11/ 2    (大学祭のため休講)
  5      9    統計的差別はあり得ないのか:3人の学生の会話
  6     16    社会調査に関する断章
  7     30    既発表論文の図表を使って2次分析をしよう:
         クロス集計表・相関行列から多変量解析へ
     12/ 7    (行動科学集中講義のため休講)
  8     14    マクロ・データから何がわかるか:生態学的虚偽の問題
  9     21    社会学における合理的選択理論の意義
 10   1/11    リサイクルの社会的ジレンマにおける意思決定と正当化(1)[予定]
 11     18    リサイクルの社会的ジレンマにおける意思決定と正当化(2)[予定]
 12     25    エピローグ:鏡に映った自我−社会学のイメージ−
────────────────────────────────────────

5. レポート課題
5.1 課題
 次の2つのうち、いずれかの課題に取り組んでいただきたい。
(1) 木村の作成した文章(およびそれにもとづいた授業内容)について、改良すべき点などに関するコメントも含めて論じ、具体的に、論理と証拠にもとづいてさらに議論を発展させてみる。
(2) 木村の作成した文章にならって、自分が興味を持つ問いやテーマについて、行動科学の教材となるようなエッセイなどの文章を作成してみる。
5.2 書式
 ワープロを使用し、A4判の上質紙に横書きで印字する。『行動科学研究マニュアル』の「卒研報告・修士論文執筆要項」に準じた書式とする。具体的には、A4判の紙に30行×35〜40字(全角)で印字(横書き)。ただし、マージンは上・下30mm、左・右25mmとする。この書式で4枚以上6枚以内とする(引用文献リスト・図表を含む)。(枚数が多くなる分にはかまわないが、あまり散漫になるのも考えものなので、一応この程度とする。)
レポートの冒頭には、タイトル、学籍番号・氏名、提出日を記しておく。また、ページ番号をふっておくこと。
5.3 提出期限と提出場所
 2007年2月6日(火)まで。行動科学分析室にある(スタッフへの配布物用の)レターケースの木村の棚に入れる。

6. その他
6.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする。
6.2 成績評価
 成績は、レポートと、出席や議論への参加の状況とにより、総合的に判断する。


行動科学演習
「階層意識の計量分析」
(3・4年生向け;第6・8セメスター 月曜日 13:00-14:30)

1. 基本方針
 階層帰属意識、満足感、不公平感、政治意識、学歴意識、性別役割意識など、広い意味での階層意識について、既存の社会調査データの計量分析(「2次分析」)を通して探求を行う。先行研究を検討し、問いや疑問(「なぜ?」)を明確化し、適切なデータセットを選択し、仮説を構築し、その仮説から導かれた予想がデータの統計的分析から支持されるか確かめる。さらに、その成果を、最終的に「報告書」の形にまとめる。このようにして、社会調査データの統計的分析を用いた研究のイメージを体得してもらうことも、この演習のねらいに含まれる。
 人文統計学・行動科学基礎実習などデータ分析に関する授業を履修していることを前提にする。第5セメスターの行動科学演習「階層・階級とジェンダー・家族・階層意識の計量分析」を履修していたことが望ましい。

2. 主な参考文献

  • 石原邦雄(編). 2002. 『家族と職業─調整と競合─』 (シリーズ〈家族はいま…〉5) ミネルヴァ書房.
  • 片瀬一男(編). 2001. 『教育と社会に対する高校生の意識─第4次調査報告書』 東北大学教育文化研究会.
  • 片瀬一男・木村邦博・阿部晃士(編). 2005. 『教育と社会に対する高校生の意識─第5次調査報告書』 東北大学教育文化研究会
  • 木村邦博. 1998. 「教育、学歴社会イメージと不公平感」 『理論と方法』 13(1):107-126 数理社会学会.
  • 木村邦博・野沢慎司(編). 1994. 『現代女性の生活と意識に関する調査報告書』 静岡大学人文学部社会学科社会学研究室 (私家版).
  • 直井優ほか(編). 1990. 『現代日本の階層構造』(全4巻) 東京大学出版会.
  • 盛山和夫ほか(編). 1998. 『1995年SSM調査シリーズ』(全21巻) 1995年SSM調査研究会.
  • 盛山和夫ほか(編). 2000. 『日本の階層システム』(全6巻) 東京大学出版会.
  • 白波瀬佐和子. 2005. 『少子高齢社会のみえない格差─ジェンダー・世代・階層のゆくえ─』東京大学出版会.
  • 鈴木昭逸・海野道郎・片瀬一男(編). 1996. 『教育と社会に対する高校生の意識─第3次調査報告書』 東北大学教育文化研究会.
  • 武井槙次・木村邦博. 1992. 「高校生の学歴アスピレーションと階層─『文化的再生産論』にもとづく考察─」 『人文科学研究』 80:1-33.
  • 富永健一(編). 1979. 『日本の階層構造』東京大学出版会.
  • 東北大学文学部教育文化研究会(編). 1988. 『教育と社会に対する高校生の意識─第1次調査報告書』 東北大学文学部教育文化研究会.
  • Tsuya, Noriko O., and Larry L. Bumpass. 2004. Marriage, Work & Family Life in Comparative Perspective: Japan, South Korea & the United States. Honolulu: University of Hawai'i Press.
  • 海野道郎・片瀬一男(編). 1990. 『教育と社会に対する高校生の意識調査−第2次調査報告書』 東北大学文学部教育文化研究会.
  • 渡辺秀樹・稲葉昭英・嶋崎尚子(編). 2004. 『現代家族の構造と変容─全国家族調査 [NFRJ98] による計量分析─』 東京大学出版会.
  • Wright, Erik Olin. 1997. Class Counts: Comparative Studies in Class Analysis. New York: Cambridge University Press.
  • ────. 2000. Class Counts, student edition. New York: Cambridge University Press.

3. 授業の進め方
 学部3年生に対して期待するのは以下のようなことである。前期の行動科学演習での勉強をふまえ、また夏休み中に読んでおいた文献などもふまえ、先行研究を検討し、各自の研究テーマ・課題を確定するとともに、今後の展望を考える。さらに、行動科学研究室で利用可能な社会調査データ(SSM調査、高校生調査、静岡女性調査など)を用いた追試を企画・実施する。中間報告と最終報告で、その成果を報告する。その際、先行研究でどのような「問い」がたてられ、その問いに対してどのような方法でアプローチがなされ、どのようなことが明らかになったのか、また依然として明らかになっていないのはどのようなことであり、その解明にはどのようなことが必要か、といったことをじっくりと考えて分析・考察を行っていただきたい。この演習での経験が、受講生諸君の卒業研究・卒業論文につながることを期待している。
 学部4年生に関しては、随時、卒業研究・卒業論文の進行状況報告をしていただきたい。学部3年生に対してよき手本となることを目指してほしい。また、適宜、3年生のデータ分析に対してアドバイスをしていただければ幸いである。

4. 利用可能な社会調査データについて(主なもの)
(1) 社会階層と社会移動全国調査(SSM調査:1955, 1965, 1975, 1985, 1995)
 日本の階層構造と階層意識に関する代表的な継続的調査研究。1955年から10ごとに実施されている。女性が対象に含まれるようになったのは1985年調査から。直井優ほか (1990)、盛山和夫ほか (1998)、盛山和夫ほか (2000)、富永健一 (1979) などを参照。
(2) 教育と社会に対する高校生の意識調査(高校生調査:第1次〜第5次)
 宮城県内(第2次は仙台圏以外、それ以外は仙台圏)の高校生とその両親を対象。調査項目は、進路志望、不公平感、文化資本、性別役割意識(第3次調査以降)、学習意識(第4次調査以降)など。詳しくは、東北大学文学部教育文化研究会 (1988)、海野道郎・片瀬一男 (1990)、鈴木昭逸・海野道郎・片瀬一男 (1996)、片瀬 (2001)、片瀬・木村・阿部(2005) を参照。
(3) 現代女性の生活と意識に関する調査 (1992, 1993)  静岡市内の既婚女性で、夫が生存しており、末子が小学校在学中の人を対象。調査項目は、家庭生活(家事分担など)、社会的ネットワーク、階層意識(階層帰属意識、不公平感など)、性別役割意識、ほか。詳しくは、木村・野沢 (1994) を参照。


5. スケジュール(予定)

────────────────────────────────────────
 回  月/日         内容
────────────────────────────────────────
     10/ 2    (集中講義のため休講)
  1     16    授業計画の説明
  2     23    卒業研究・卒業論文の進行状況の報告(4年生2名)
  3     30    先行研究の検討と課題設定に関する報告
  4  11/ 6    卒業研究・卒業論文の進行状況の報告(4年生2名)
  5     13    利用可能な既存データによる先行研究の追試(1)
  6     20    利用可能な既存データによる先行研究の追試(2)
  7     27    利用可能な既存データによる先行研究の追試(3)
     12/ 4    利用可能な既存データによる先行研究の追試(4)
  8     11    中間報告
  9     18    利用可能な既存データによる先行研究の追試(5)
 10   1/15    利用可能な既存データによる先行研究の追試(6)
 11     22    最終報告
        29    (予備日)
────────────────────────────────────────

6. レポート課題
6.1 課題
 階層帰属意識、満足感、不公平感、政治意識、学歴意識、性別役割意識など、広い意味での階層意識について、各自の研究テーマに関する先行研究の知見を追試した結果について、報告し、考察を行う。
6.2 書式
 ワープロを使用し、A4判の上質紙に横書きで印字する。『行動科学研究マニュアル』の「卒研報告・修士論文執筆要項」に準じた書式とする。具体的には、A4判の紙に30行×35〜40字(全角)で印字(横書き)。ただし、マージンは上・下30mm、左・右25mmとする。この書式で4枚以上6枚以内とする(引用文献リスト・図表を含む)。(枚数が多くなる分にはかまわないが、あまり散漫になるのも考えものなので、一応この程度とする。)
レポートの冒頭には、タイトル、学籍番号・氏名、提出日を記しておく。また、ページ番号をふっておくこと。
6.3 提出期限と提出場所
 2007年2月6日(火)まで。行動科学分析室にある(スタッフへの配布物用の)レターケースの木村の棚に入れる。

7. その他
7.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする。積極的に相談に来ていただければ幸いである。
7.2 成績評価
 成績は、レポートと、出席や議論への参加の状況とにより、総合的に判断する。


行動科学基礎演習
「行動科学的研究の基礎:計量分析と合理的選択理論にもとづく社会階層研究入門」
(2年生向け;第4セメスター 金曜日 10:30-12:00)

1. 基本方針
 私たちが生きている社会には、職業・学歴・所得・財産所有などにもとづく格差がある。社会はそれらの基準によって「階層化」されている、と言ってもよい。このような意味での社会階層に関する研究は、行動科学研究室が取り組んでいることのひとつである。社会階層の研究は、近年、大規模な社会調査(国際比較も含む)によって得られたデータの計量的・統計的分析と、個人の行為選択に関する理論(合理的選択理論)とを結びつけるような形で展開しつつある。このような研究動向をふまえ、社会階層に関して、大規模調査データの計量的分析と合理的選択理論による説明との両方の観点からアプローチした英文の入門書を読みながら、行動科学的研究の基礎と英語文献の読み方を学ぶことを目標とする。
 なお、文学部学生であれば1年次に受講した英語原書講読入門で身につけた英文読解力をフルに活用してほしい。

2. 教科書・参考書
【教科書】

  • Breen, Richard, and David B. Rottman. 1995. Class Stratification: A Comparative Perspective. New York: Harvester/Wheatsheaf.
【参考文献(主なもの)】
  • Boudon, Raymond. 1973. L'inegalite des chances. Paris: Armand Colin. 『機会の不平等─産業社会における教育と社会移動─』 杉本一郎・山本剛彦・草壁八郎訳 新曜社 1983.
  • ────. 1979. La logique du social. Paris: Hachette. [The Logic of Social Action: An Introduction to Sociological Analysis, translated by David Silverman with the assistance of Gillian Silverman. London: Routlege & Kegan Paul. 1981.]
  • ────. 1982. The Unintended Consequences of Social Action. London: Macmillan.
  • Coleman, James S. 1990. Foundations of Social Theory. Cambridge, Massachusetts: Belknap Press. 『社会理論の基礎』(上・下) 久慈利武監訳 青木書店 2004 [原著第1章から第24章までの訳].
  • Coleman, James S., and Thomas J. Fararo, eds. 1992. Rational Choice Thery: Advocacy and Critique. Newbury Park, California: Sage.
  • Collins, Randall. 1994. Four Sociological Traditions. New York: Oxford University Press. 『ランドル・コリンズが語る社会学の歴史』 友枝敏雄訳者代表 有斐閣 1997.
  • Elster, Jon. 1989. Nuts and Bolts for the Social Sciences. Cambridge: Cambridge University Press. 『社会科学の道具箱─合理的選択理論入門─』 海野道郎訳 ハーベスト社 1997.
  • Giddens, Anthony. [1975] 1981. The Class Structure of the Advanced Societies, 2nd ed. London : Hutchinson. 『先進社会の階級構造』 市川統洋訳 みすず書房 1977 [原著初版の訳].
  • Goldthorpe, John H. 2000. On Sociology: Numbers, Narratives, and the Integration of Research and Theory. New York: Oxford University Press.
  • 原 純輔・盛山和夫. 1999. 『社会階層―豊かさの中の不平等―』 東京大学出版会.
  • 橋本健二. 1999. 『現代日本の階級構造─理論・方法・計量分析─』 東信堂.
  • Hechter, Michael, and Satoshi Kanazawa. 1997. "Sociological Rational Choice Theory," Annual Review of Sociology. 23:191-214.
  • 鹿又伸夫. 2001. 『機会と結果の不平等─世代間異動と所得・資産格差─』 ミネルヴァ書房.
  • Murphy, Raymond.1988. Social Closure: The Theory of Monopolization and Exclusion. 『社会的閉鎖の理論─独占と排除の動態的構造─』 辰巳伸知訳 新曜社 1994.
  • 直井 優・原 純輔・小林 甫(編). 1986. 『社会階層・社会移動』(リーディングス日本の社会学 8) 東京大学出版会.
  • 直井 優 ほか(編). 1990. 『現代日本の階層構造』(全4巻) 東京大学出版会.
  • 盛山和夫. 1994. 「階層研究における『女性問題』」 『理論と方法』 9(2):111-126.
  • 盛山和夫ほか(編). 2000. 『日本の階層システム』(全6巻) 東京大学出版会.
  • 高増 明・松井 暁 (編). 1999. 『アナリティカル・マルキシズム』 ナカニシヤ出版.
  • 富永健一(編). 1979. 『日本の階層構造』 東京大学出版会.
  • 牛島千尋. 『ジェンダーと社会階級』 恒星社厚生閣.
  • Wright, Erik Olin. 1997. Class Counts: Comparative Studies in Class Analysis. New York: Cambridge University Press.
  • ────. 2000. Class Counts, student edition. New York: Cambridge University Press.

3. 授業の進め方
 指定された章に関して、報告と討論を行なう (「4. スケジュール」を参照)。報告者は「レジュメ」(配付資料)を用意して、担当の章の内容を過不足なく紹介するとともに、疑問点や問題点などを指摘する。報告者以外の受講生は、報告者に対し質問をし、議論に参加する。

注意
 レジュメ(配付資料)は、原書の「直訳」ではいけない。翻訳のしかたやプレゼンテーション技術に関する参考書を読み、そこに書かれていることを活かす形でレジュメを作成すること。
重要なお願い
 「英語」の文献を用いた授業というと、「与えられた英文テクストと自分の辞書(多くは初心者向けの小型のものか電子辞書)とだけでどれだけのことができるか」を試すものと誤解している人が多いような気がする。(その結果、受講生は「日本語になっていない」文章を書いているだけで、内容の理解もおぼつかないまま終わってしまっているように思う。)しかし、少なくとも、この授業はそうではない。「2. 教科書・参考書」で紹介した文献(日本語のものでよい)や、別紙資料の「英語の文章を理解する力をつけるために」で紹介している本や辞書(東北大学の図書館や行動科学研究室等に所蔵あり)、授業の第2回目で紹介する「認知科学・認知心理学等にもとづく英文解釈法」などを活用して、授業に取り組んでほしい。何よりも、「行動科学系の英語文献の内容を理解する力を養う」ことが、この授業の主眼だからである。

4. スケジュール(予定)

────────────────────────────────────────
  回  月/日         内容(テキストの章など)                            担当
────────────────────────────────────────
   1  10/ 6  授業計画の説明、担当の決定
   2     13  認知科学・認知心理学等にもとづく英文解釈法について
   3     20  1. Making sense of stratification
         27  (木村が出張中のため休講)
   4  11/10  2. Startification theories
             (Introduction 〜 Richard Scase: A pragmatic Marxist)
   5     17  2. Stratification theories
             (Frank Parkin's bourgeois critique of Marxist class theory
             〜 Conclusion: What a theory of class should tell us)
   6     24  3. Class classifications
   7  12/ 1  4. Class structure in advanced sosieties: Patterns and
             variations
   8      8  5. Social mobility
   9     15  6. Class in geographical perspective
  10     22  7. Challenges to class analysis
             (Introduction 〜 Status attainment research)
  11   1/12  7. Challenges to class analysis
             (Class and race 〜 Conclusions)
  12     19  8. Class and social power [全体のまとめを含む]
         26  (予備日)
────────────────────────────────────────

5. レポート課題
5.1 課題
 自分が担当した章(のうちひとつ)について、(もちろん他の章や他の文献との関係を意識しながら)論点を絞って内容の要約とコメントを行う。(どの部分が内容の要約で、どの部分が自分の意見であるかを、全体として明確に書き分けること。)
5.2 書式
 原則としてワープロを使用すること。『行動科学研究マニュアル』の「卒研報告・修士論文執筆要項」に準じた書式とする。具体的には、A4判の紙に30行×35〜40字(全角)で印字(横書き)。ただし、マージンは上・下30mm、左・右25mmとする。枚数制限はない。
 図表は、できる限り本文中に挿入。レポートの冒頭には、タイトル、執筆者の学籍番号・氏名、提出日を記しておく(枚数に含まれる)。また、ページ番号をふっておくこと。
5.3 提出期限と提出場所
 2007年 2月 6日(火)、17:00 まで。行動科学分析室にある(スタッフへの配布物用の)レターケースの木村の棚に入れる。

6. その他
6.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする。この基礎演習の内容に関する質問、報告にあたっての相談などがある場合には、オフィスアワーを活用してほしい。なお、できる限り事前にアポイントメント(予約)をとるようにしていただきたい。
6.2 成績評価
成績は、報告やレポートの評価、出席状況などにもとづいて総合的に判断する予定である。


英語原書講読入門
「人文社会科学における統計的手法を用いた英語文献の読み方の初歩」
(1年生向け;第1セメスター 金曜日 13:00-14:30)

1. 基本方針
 人文社会科学系の英語文献の中には、統計的な分析手法を用いたものがある。この授業では、そのような文献を読みこなす基礎力を養うために、われわれの生活の中に潜む「統計のウソ」について取り上げ論じた古典的名著をテキストとして、講読を行う。このテキストには、邦訳が出ている。そこで、報告担当者は、原著の「直訳」をするのでなく、(邦訳書も適宜、参考にしながら)原著の内容を理解した上で、その「要約(レジュメ、資料)」を作成し、解説と問題点に関する報告とを行う。できれば、自分たちで、テキストで紹介されているのと同じような事例を身近なところから(たとえば、新聞記事・雑誌記事・書籍・学術論文等から)見つけ出し、紹介してもらえると、なおよいだろう。
 ただし、原著は全体的には優れたものであるものの、表現や説明が不親切と思われるところが多々ある。また、この邦訳書も、全体的には優れたものであるものの、残念ながら誤訳・悪訳・未翻訳(欠落)部分・説明不足などの問題点を免れていない。報告者には、これらの問題点を発見・指摘し、改良案を提示することで、「翻訳」のセンスや表現の技術などを身につけることをめざしてほしい。
 このような作業を経験することによって身につけてほしいと期待しているのは、広い意味での「情報」を的確に理解・評価する能力である。とりわけ、その中でも次の2つである。
(1) 英語の文章を的確に読み、その内容を日本語で的確に表現する能力
(2) 英語の文章の理解にもとづいて、その内容に関連した統計的データなどの情報を検索・入手し、それを的確に分析し、その分析結果を的確に表現する能力

2. 教科書・参考書
【教科書】

  • Huff, Darrell. [1954] 1973. How to Lie with Statistics. New York: W. W. Norton. 『統計でウソをつく法−数式を使わない統計学入門−』 高木秀玄訳 講談社 (ブルーバックス).
【参考書(テキストの内容に関するもの)】
  • Best, Joel. 2001. Damned Lies and Statistics: Untangling Numbers from the Media, Politicians, and Activists. Berkeley: University of California Press. 『統計はこうしてウソをつく−だまされないための統計学入門−』 林大訳 白揚社 2002.
  • Mauro, John. 1992. Statistical Deception at Work. Hillsdale, New Jersey: Lawrence Earlbaum Associates.
  • Paulos, John A. 1995. A Mathematician Reads the Newspaper. New York: Doubleday. 『数学者が新聞を読むと』 はやし・はじめ、はやし・まさる訳 飛鳥新社 1998.
  • 谷岡一郎. 2000. 『「社会調査」のウソ−リサーチ・リテラシーのすすめ−』 文藝春秋(文春新書).
  • 渡辺久哲. 1998. 『調査データにだまされない法』 創元社.
  • Zeisel, Hans. 1985. Say it with Figures, 6th ed. New York: Harper & Row. 『数字で語る−社会統計学入門−』佐藤郁哉訳 新曜社 2005.
 なお、これらの参考書の大部分は、東北大学文学部・行動科学分析室の授業参考図書コーナーにも陳列してある。行動科学研究室内で閲覧することが可能である。

3. 授業の進め方
 まず、教科書の講読にはいる前に、認知科学・認知心理学等の近年の知見を応用した英文解釈法について、解説を行う。あるいは皆さんがこれまで習ってきた英文解釈法と異なることもあり、戸惑いや疑念を感じるかもしれないけれども、まずはここで紹介する方法を実際に試してみていただければ幸いである。
 教科書の講読に関しては、指定された章に関して、報告と討論を行なう形を取る (「4. スケジュール」を参照)。各章を担当する報告者(複数)は、互いによく協力・相談しつつ(機械的に分担するのでなく)、「レジュメ」を用意して、担当の章の内容を過不足なく紹介するとともに、原著の内容や邦訳書の翻訳(英文解釈)に関して評価すべき点とともに疑問点・問題点などを指摘する。報告者以外の受講生は、報告者に対し質問をし、議論に参加する。
 以上のような作業にもとづいて、各自が学期末レポートを執筆する(「5. レポート課題」を参照)。

注意
 レジュメは、原書の「直訳」ではいけない。また、邦訳書を単に要約したものでもいけない。(上述のように、邦訳にはいくつか問題点があることに注意。)翻訳のしかたやプレゼンテーション技術に関する参考書を読み、そこに書かれていることを活かす形でレジュメを作成すること。
重要なお願い
 「英語」の授業というと、「与えられた英文テクストと自分の辞書(多くは初心者向けの小型のものか電子辞書)とだけでどれだけのことができるか」をためすものと誤解している人が多いような気がする。(その結果、受講生は「日本語になっていない」文章を書いているだけで、内容の理解もおぼつかないまま終わってしまっているように思う。)しかし、少なくとも、この授業はそうではない。英文テキストの邦訳、「2. 教科書・参考書」で紹介した文献(日本語のものでよい)や、別紙資料の「英語の文章を理解する力をつけるために」で紹介している本や辞書(東北大学の図書館や行動科学研究室等に所蔵あり)などを活用して、授業に取り組んでほしい。何よりも、「人文社会科学系の英語文献(さらにはそれ以外の英語の文献など)の内容を理解する力を養う」ことが、この授業の主眼だからである。


4. スケジュール

────────────────────────────────────────
  回  月/日         内容(テキストの章など)                         担当
────────────────────────────────────────
   1   4/14   授業計画の説明、担当の決定
   2     21   認知科学・認知心理学等にもとづく英文解釈法について
   3     28   発表の準備・打ち合わせ
   4   5/12    Introduction (Epigraph, Acknowledgments も含む)
   5     19    1. The Sample with the Built-in Bias
   6     26    2. The Well-Chosen Average
   7   6/ 2    3. The Little Figures That Are Not There
   8      9    4. Much Ado about Practically Nothing
               5. The Gee-Whiz Graph
   9     16    6. The One-Dimensional Picture
               7. The Semiattached Figure
  10     23    8. Post Hoc Rides Again
  11     30    9. How to Statisticulate
  12   7/ 7   10. How to Talk Back to a Statistic
  13     14   総合討論:人文社会科学の英語文献を理解するために
  15     21   (予備日)
────────────────────────────────────────

5. レポート課題
5.1 課題
 授業における報告にもとづいて、テキスト(原著および邦訳書)の評価すべき点、問題点およびその改善案について、テキスト(原著・邦訳書)や参考書の具体的な箇所を明示しながら論じる。その際、自分(たち)で見つけ出した、統計の誤用例の紹介も加えれば、なおよいだろう。
5.2 書式
 原則としてワープロを使用すること。A4判の紙に30行×35〜40字(全角)で印字(横書き)。ただし、マージンは上・下30mm、左・右25mmとする。枚数制限はない。
 図表はできる限り本文中に挿入する。
 レポートの冒頭には、タイトル、執筆者の学籍番号・氏名、提出日を記しておく(枚数に含まれる)。また、ページ番号をふっておくこと。
5.3 提出期限と提出場所
 2006年 7月28日(金)、17:00 まで。行動科学分析室にある(スタッフへの配布物用の)レターケースの木村の棚に入れる。

6. その他
6.1 オフィス・アワー
 *曜日、**:**-**:**とする。この英語原書講読入門の内容に関する質問、報告にあたっての相談などがある場合には、オフィスアワーを活用してほしい。なお、できる限り事前にアポイントメント(予約)をとるようにしていただきたい。
 木村の連絡先(電子メールアドレス) kkimurasal.tohoku.ac.jp
6.2 成績評価
 成績は、期末レポートの評価、授業での活動(出席状況・報告・質問・コメント等)などにもとづいて総合的に判断する予定である。


社会学
(東北学院大学・教養科目・文教経1年生向け 前期 水曜日 8:30-10:00)

1. 講義の概要
 社会学がめざすのは、
(1) 私たちの日常生活の中にある「不思議な社会現象」や「社会問題」の発見
(2) それを生み出すメカニズムやプロセスの解明
(3) 問題の解決策の模索とその解決策のもたらす「意図せざる結果」の検討
ということである。社会学的研究の具体的な例を取り上げ、それらがこのねらいにどのような方法で取り組み、どのような成果を上げたのかを解説する。それによって現代社会の分析の基本的な考え方を伝えたい。社会学的な考え方が、皆さんの生活の中で何らかの役に立てば幸いである。

2. 教科書・参考書
 教科書として、

  • 小林淳一・木村邦博(編著). 1991. 『考える社会学』 ミネルヴァ書房.
を用いる。

3. 講義の進め方(基本方針)
 教科書の中から6つの章を選び、おおよそひとつの章につき2回で講義する。教科書にない話をする回もある。
 「暗記」は要求しない。「考える」ことを心がけてほしい。教科書(あるいは配付資料など)の「問」について各自考え、また周囲にいる人と討論していただきたい。講義の時間中に「問」について考えたことを紙に書いて提出してもらう予定である。提出用の紙は、各自がB5判のレポート用紙を持参してそれを用いてほしいと考えている。
 なお、「予習」も、事前に教科書に目を通してくるだけというのなら必要ない(むしろしないでほしい)。しかし、教科書の「問」に対してじっくりと考え、その考えを授業のときに発表したいというのなら歓迎する。
 質問や議論も大歓迎である。講義の途中でも、どしどし口をはさんでほしい。


4. 講義内容(日時・内容等を変更する場合があるので注意すること)

──────────────────────────────────────
   回    日付    内容
──────────────────────────────────────
    1    4/12    イントロダクション(1)
    2      19    イントロダクション(2)
    3      26     1章  予言の自己成就
    4    5/10    15章  豊かさの中の自殺(1)
    5      17    15章  豊かさの中の自殺(2)
    6      24     9章  相対的剥奪の考え方
    7      31     8章  逸脱とラベリング(1)
    8    6/ 7     8章  逸脱とラベリング(2)
    9      14    人はなぜ犯罪をしないのか:「社会的絆」の理論
   10      21    12章 組織と人間:全面的収容施設における二次的適応
   11      28     4章  官僚制の逆機能(1)
   12    7/ 5     4章  官僚制の逆機能(2)
──────────────────────────────────────
 注:第9回(6/14)の話は、教科書にないものである。

5. 試験について
 7月下旬の試験期間中に試験を実施する。具体的なことについては、後日、講義の中で指示する。(試験について個人的に質問してくる人がよくいるが、それには応じない。)
 なお、成績は、この期末試験の評価と出席状況とにもとづいて、総合的に判断してつける。ただし、これは次のような意味である。期末試験できわめて優秀な答案が書けていれば、出席状況を問わない。他方、期末試験での答案がきわめてひどい場合、毎回出席していたとしても不可とする。期末試験での答案が中程度の場合、出席状況を加味して成績をつけることがある。


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