『ヘスティアとクリオ』発刊趣意

こんにち、コミュニティのあり様がグローバリゼーションのなかで、大きく問われている。ヴァーチャル・コミュニティを含む、ローカリティの内容や、合併問題、あるいは、地域防災、防犯等の人びとの日常生活上のさまざまなイッシューまで、その内容は多岐に及んでいる。

また、さらに市民社会をめぐるあらたな議論の台頭とかかわって、コミュニティの再審もはじまっている。ここでは、いわゆる上からの再編という文脈とともに、NPOとかボランタリー・アソシエーション等との協働の枠組みが問われるなかで、たとえば当事者主体性とか市民的専門性といわれるものの内実が検討されている。

しかも、コミュニティのあり様をめぐる議論は、これだけにとどまらない。ポスト・コロニアル、ポスト・デタントの時代におけるアジアの屈曲したモダニティの現在を、グラスルーツに引き寄せて論じる議論もみられる。たとえば、中国の居民委員会、韓国の班・常会、インドネシアのRT/RWなどへの着目もまた、コミュニティのあり様に照準が据えられている。

本誌は、上述のような状況を、これまで個別分散的に考究してきた斯界にたいしてフォーラムの場を設けることを目指して、発刊される。広い視野に立ってコミュニティのガヴァナンスの構築に資するために、コミュニティの政治力学、社会史そして文化について啓発的な論壇を提供しようとするものである。

なお本誌は、当面、日本学術振興会科学研究費補助金(基盤(A)(1))「『ポスト占領体制』期地域住民組織の比較・歴史社会学的研究」(課題番号16203029・代表・吉原直樹)による研究成果の一部として刊行するものとする。


天野 正子 [東京女学館大学・社会学]
新藤 宗幸 [千葉大学・行政学]
中野 隆生 [首都大学東京・歴史学]
成田 龍一 [日本女子大学・歴史学]
名和田是彦 [法政大学・法社会学]
吉原 直樹 [東北大学・社会学]