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URL: http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/writing/
作成:田中重人 (東北大学文学部准教授)

東北大学文学部 (2010年度) 現代日本論基礎講読「論文作成の基礎」

第5講 構文解析 (5/14)


[配布資料PDF版]
[今回のテーマ] 文の構造を解析する

パラグラフ課題についてコメント

「OK」が付いている人以外は、トピック・関連情報と文章との対応に問題あり → 修正して再提出

パラグラフの問題

文の長さ

ひとつの文にはひとつの情報だけを載せる。ふたつ以上の情報を盛り込むのは避け、できるかぎり単純な文をならべること (今日の授業内容参照)。

述語に対する必須要素

主格・目的格・場所・時間など、必要な情報が落ちていないか確認すること。省略しなければ不自然になる場合をのぞき、なるべく省略を避ける。

ことばの表記

おなじ言葉はできる限りおなじ表記を使うこと。

自分なりの方針をきめて、ファイルに残していくとよい。

引用・参照

文献資料等からの引用・参照に当たっては、

初出の用語

ことばの定義をするときは、鍵括弧を使う。

……のようなものを「ら抜きことば」という。

重要なことばが外来語である場合、初出のときに原語を併記すること。

「クレオール」(Creole) とは……

数字の表記

数量・年号・日付・時間・順序などをあらわす数字には、アラビア数字(算用数字: 1 2 3 4 …)を使う。

2人 3種類 1930年代 懲役8年

ただし、固有名詞化したものや慣用句的なものの場合には漢数字 (一 二 三 四 ……) をつかってよい

三重県四日市市 十干十二支 三日月 四面楚歌

全角文字と半角文字

日本語の文字は、おなじ大きさの正方形の枠内にデザインされている。 この正方形枠のことを「全角」という。アルファベットと数字には、 全角にデザインされた文字と、半角(全角よりも幅が狭いかたち)にデザインされた文字がある。

全角文字の例: ひらがな カタカナ 漢字全角

1234 ABCD abcd

半角文字の例: 1234 ABCD abcd

アルファベット/数字が2字以上つづく場合は、半角文字を使う。アルファベット/数字が 1字だけの場合は、全角・半角どちらでもよい。

2009年5月22日 × 2009年5月22日

括弧類・コンマ・ピリオドなどの記号は全角・半角いずれを使ってもよい。 ただし、半角記号を使う場合は、その前後のスペースを適切に入れること。

全角記号の前後にはスペースを入れない。

フォントの問題

文字の種類 (font) には、 飾りのついたデザインのもの(たとえば明朝体)と飾りのないデザインのもの(たとえばゴシック体)がある。論文の本文には前者を用いる。後者はタイトル、セクション見出し、特に強調したい語句などにだけ使う。

Windows で使われる「MS P 明朝」は、一部の文字が全角でないサイズになっているので、使わないほうがよい。

MS P明朝: 句読点、や「かぎ括弧」の前後が詰まる。
MS明朝: 句読点、や「かぎ括弧」の前後が詰まらない。

なお、日本語文字は 斜体 にしてはならない。

アルファベットにはさまざまなフォントがあるが、 Roman 体かその変種が基本である。WindowsではTimes New Roman フォントが使える。


今回の課題

各自のパラグラフ課題の文章から、いちばん複雑な文を選んで下線を引く。その文を構文解析したうえ、わかりやすく書き直す。


構文解析とは

文 (sentence): 文章のなかで、句点(またはピリオド)で区切られたひとまとまりの部分。
構文解析 (parsing): 文の構成要素同士の修飾関係を分析すること。
文節: 自立語ひとつに0個以上の付属語が接続したひとまとまり。ただし、付属語とは助詞および助動詞、自立語とはそれら以外の全品詞をさす。形式体言(こと・もの……)、形式用言(ある・いる・みる……)は自立語とみなす。さ行変格活用動詞はひとつの自立語とみなす(名詞に「する」がついたものとは考えない)。複合動詞や連語はひとつの自立語とみなす。

文節に切りわけてみよう

係り受け: 文節間の修飾−被修飾関係。

    例:
    道を−歩く  月が−沈む  目で−見る
    駅に−行く  家から−出る 早く−食べる
    頭が−痛い  屋根より−高い
    大きな−手  私の−本   すごく−大きい
構文木: 文節間の係り受け関係を図に表したもの。修飾する(係る)文節を左に、修飾される(受ける)文節を右において、係り受け関係を線で示す

例:これらの図を使って説明すると、学生は日本文における「主語」の不在をすんなりと理解してくれる。

構文木の、いちばん右の、枝分かれしていない部分を「根」(root) という。上の例でいうと、「理解してくれる」が根である。

並列構造: 文のなかに、文法上同格の要素が隣り合わせに配置されていることがある。このような場合、並列の要素を上下にならべ、四角で囲んで線で区分する。

例:調査は仙台と福島でおこなった。

例:私は○○を助手席に乗せ、車を走らせた。


単純な文

構文がある程度以上複雑になると、非常に読みづらくなる: 枝わかれが多い、枝が長い、並列構造のなかに複雑な枝わかれがある、枝の先に並列構造がある、係り受けや同格関係が確定できない、など。

対策: 余計な文節を削る、枝を切り落として独立させる、並列構造の中身を小さくする、読点などの記号を活用する、注や箇条書きや表を活用する。


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