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MY INTEGRATE日本学 教員インタビュー

「多様性」を最大の
武器に、
新たな日本学
の創造に挑戦しよう。

02
大学院国際文化研究科 教授

小野 尚之 ONO Naoyuki

「創造する日本学」の研究成果から知の循環を生み出す。

東北大学は2015年7月から、「持続可能でココロ豊かな社会」の創造に向け、社会の深刻な課題の解決に取り組む研究拠点として、「社会にインパクトある研究」の取り組みを進めています。この取り組みでは、東北大学が解決に貢献すべき7つのグループテーマを掲げています。その一つ「世界から敬愛される国づくり」の中に、私がリーダーを務めるプロジェクト「創造する日本学」があります。

「創造する日本学」では、対立や紛争の激化、他者を排除する思想の広がり、自然環境の破壊など、地球規模で起こっている問題の多くが、基本的には価値観の衝突から生じていると捉えています。こうした問題の解決には、新たな価値の創造が必要となります。新たな価値を日本の文化的な土壌から創造し、発信していくこと、それが「創造する日本学」の目標です。

「創造する日本学」というプロジェクト名には、“世界が共感する「日本文化」の創造的価値の探究”という副題がついています。ここで最も重要なのが「世界が共感する」という部分です。日本から発信する新たな価値を、「それはいいことだ」と世界の人々に共感していただき、それによって世界の人々の心を豊かにする、そんな壮大な発想がこのプロジェクトの根底にはあります。

大学にとって「研究」と「教育」はいわば車の両輪です。「創造する日本学」の中で先端的な研究を進め、その成果を教育の場に還元していく、その受け皿となるのが新たに発足する「日本学国際共同大学院」と言うことができるでしょう。従来からある日本学ではなく、「創造する日本学」による新たな創造的価値を「日本学国際共同大学院」に持ち込む。そうすることで両者の間に知の循環を生み出していく、それもまた私たちの目標です。

「配慮」という日本固有の文化価値を世界に向けて発信する。
「配慮」という日本固有の文化価値を世界に向けて発信する。

「創造する日本学」では、すでに多くの研究が実践され、成果を挙げています。私自身は、「日本語から見た日本文化」という研究に取り組んできました。日本語のコミュニケーションは、「わきまえ」や「配慮」に基づいて行われます。日本語には敬語がありますが、敬語がこれだけ発達している言語は日本語以外ありません。また、英語の「I」が、日本語では話し相手との関係によって「私・僕・俺」というように変化します。こうした例はすべて、「わきまえ」や「配慮」に結び付いているのです。この点について、中国や韓国の研究者と議論すると、どちらの国の言語にも「配慮」という概念がありません。つまり、日本語に固有のものなのです。

ヨーロッパ系の言語では、「私」があって「あなた」があって、対立の中で関係性が出てきます。それに対し、日本語では協調や和をベースに人間関係を構築していくのです。日本語の解析から見えてくる「配慮」という日本固有の文化価値を明らかにし、世界が理解すべき文化価値として発信できると考えているところです。

私以外にも、文学研究科や国際文化研究科、東北アジア研究センターに所属する研究者が、それぞれの専門分野や視点から「創造する日本学」の研究に取り組んでいます。移民や難民の問題に対し解決策を提示する「近代日本の空間と移動」についての研究や、東北文化を世界に発信する「資料調査に基づく東北地方史の研究」、感性学としての日本学の方法を考察する「日本と『日本』のあいだ—新しい方法論の試み」など、さまざまな研究があります。詳細は、研究・実践集として公開されていますので、日本学国際共同大学院での教育・研究を理解するための一助としてください。

東北大学の日本学研究には「多様性」という際立った特色がある。
東北大学の日本学研究には「多様性」という際立った特色がある。

現在、国際日本文化研究センター(日文研)を中心に、日本学のプログラムを有する国内12機関が参加するコンソーシアムが形成されています。日本学に取り組む他の機関と比較した場合、私たち東北大学の日本学研究には「多様性」という際立った特色があります。

日本学という分野は元来学際的な性格を持っているものですが、文学、法学、経済学、教育学といった研究科に加え、私が所属する国際文化研究科、そして東北アジア研究センターといった組織が一堂に会する、そうした日本学プログラムは東北大学以外にはありません。将来的には理系の研究科にも参加していただき、「ものづくり精神」や自然科学研究の背景にある「日本人のものの考え方や精神」に光をあて、世界に発信してほしいと考えています。

日本学国際共同大学院もまさに多彩な分野の研究者が集まるプログラムです。だからこそ、他大学にはない分野を日本学として研究し、視野を広げることができる。言い換えれば、どんな分野から日本学にアプローチしようとする学生でも、私たちは受け入れることができるのです。

私の専門である言語学の分野で言えば、日本語とはそもそもどんな言語なのか、日本語の背景にはどんな日本文化があるのか、といったテーマが日本学研究の対象となるでしょう。その際、従来の言語学の枠を越え、例えば歴史学的な視点を取り入れたいのであれば、その分野の研究者が身近にいます。それが日本学国際共同大学院の大きな魅力ではないでしょうか。

また、日本学国際共同大学院のカリキュラムでは、6か月以上の海外研修が保証されています。受け入れ先となる海外の大学院も、このプログラムで連携するしっかりした大学院だけに、私たち教員としても大きな成果を期待しているところです。

「日本」を方法論として、日本人のものの見方や考え方に迫る。
「日本」を方法論として、日本人のものの見方や考え方に迫る。

私が専門とするのは、言語学の中でも「意味論」と言われる分野です。日本語にはいくつかの意味を持つ多義語がありますが、それがどのように伝わり、どのように相手に理解されるのかなど、日本語として面白いと思う現象を扱っています。

最近では、「女の子女の子した」といった重複語について研究しました。日本語には、「山々」「広々」「重ね重ね」といった重複語がありますが、これらは固定された表現で自由に作り出すことはできません。一方、「女の子女の子した」といった表現は、「大阪大阪した町並み」「コーヒーコーヒーしたコーヒー」というように自由に作ることができます。それはなぜなのか、という点に興味があったのです。

こうした表現の背景を探ることで、日本人はどのように物事を見ているのか、考えているのか、捉えているのか、が見えてきます。日本学国際共同大学院でも、こうした視点から研究・教育に取り組み、「日本」というものを方法論として取り込みつつ、日本人のものの見方や考え方に迫っていく、そんな人材を育てていきたいと考えています。

Profile
  • 東北大学大学院国際文化研究科教授。博士(文学)。
  • 1984年、京都外国語大学大学院修士課程修了後、神戸大学大学院博士課程に進学。鳴門教育大学助教授、山形大学助教授を経て2003年より現職。
  • 主な研究指導テーマ:意味論・語用論・日英語対照研究
  • 大学院国際文化研究科 教員プロフィール