研究科長・学部長から

2020年7月1日

ごあいさつ

 新型コロナウイルス禍のさなかに、研究科長・学部長に就任することとなりました。この間、研究棟・研究室への立ち入りの大幅制限、Web会議、テレワーク、そしてオンライン授業と、学生も教職員も未曾有の事態に直面させられてきました。様々な問題がありましたが、大局的には、感染防止に努めつつ教育をはじめとする大学機能をかろうじて維持してきたと考えております。教職員のみなさんのご尽力と学生の忍耐によるものです。
 学生のみなさんは、ことに大変だと思います。最近、読者を増やしたカミュの『ペスト』(新潮文庫。宮崎嶺雄訳)に「自宅への流刑」という言葉がありました。学生の皆さんは、まさにそのような心境であったに違いありません。しかし、ようやく大学でも制限の緩和が行われつつあります。「流刑」からの召還が徐々にではありますが、始まっているわけです。
 とはいえ、直ちにコロナ以前に戻ることはできません。感染の第二波、第三波が訪れることを想定した、あるいはコロナとの「共生」に向けた対応が必須となります。これまでは非日常の連続でしたが、これからは新型コロナウイルスと隣り合わせであることを前提とした日常生活となります。
 この間、一番問題であったのは、人と人との直接の関わり合いが著しく制限されたことでした。これは人間が社会生活を営んでいく上での根源的問題です。今後、種々の制約の下で学生同士、学生と教職員、大学と社会、本学と海外の大学、などの諸関係を維持・発展させていくことを考えなければなりません。その際、オンラインでの意思疎通や合意形成を不可欠の選択肢として担保しておく必要があります。私たちが当たり前だと思っていた様々なシステムの見直しも課題となります。惨事便乗型の「改革」は論外ですが、見直すべきところは見直さなければなりません。より積極的に、文学研究科として、社会への発信も行っていきたいと思います。すでに研究科の複数の教員が、コロナとの「共生」の時代、コロナ後の時代における人文社会科学の役割について考え、新しい研究課題に取り組み始めているのは心強いことです。
 以上、難題ばかりですが、文学研究科・文学部らしい、多面的な考察と柔軟な発想、そして強靱な意志で乗り越えていきたいと思います。みなさまのご協力と各方面よりのご支援・ご鞭撻をよろしくお願いいたします。

柳原 敏昭 文学研究科長・文学部長

東北大学 大学院文学研究科長・文学部長
柳原 敏昭