開催レポート

東北大学市民オープンキャンパス「紅葉の賀」を開催

東北大学大学院文学研究科と東北大学植物園は、11月3日文化の日に東北大学市民オープンキャンパス「紅葉の賀」を開催いたしました。2005年に始まったこの催しは今年で19回目を数えます。当日はやや肌寒い気温でしたが、晴天に加えてここ数年にない見事な紅葉に恵まれました。早めのインフルエンザの流行に加えて近隣でのクマの出没のせいもあり、昨年よりもやや寂しい200名弱の方々のご参加となりましたが、例年にも増して充実した会となりました。

午前の部は、吟行といけばな展示から始まりました。吟行にご参加の方々は、午前9時の開場前から12時30分の締め切り直前まで熱心に取り組まれ、77の投句が寄せられました。いけばな展示は、草月流本部講師の丹野霞園先生と草月流師範の佐藤霞虹先生にお願いし、植物園ロビーと文学部第1講義室の2カ所に展示していただきました。丹野先生のご自宅の草花も加えた見事ないけばなが、2つの会場を文字通り華々しく彩りました。

10時からは植物園でオープニングセレモニーが始まり、牧雅之植物園長・木村敏明文学研究科長からの開会の挨拶の後 、俳句の審査をご担当される渡辺誠一郎先生(宮城県現代俳句協会会長)・野家啓一名誉教授、公開講演講師である尾崎彰宏名誉教授・総長特命教授よりそれぞれお言葉をいただきました。

植物園の前庭では、茶道裏千家正教授である小野宗智先生と社中ならびに常盤木学園高等学校の皆様による野点に、多くの方々が肌寒く枯れ葉の舞うなかでの熱い一服を楽しんでおられました。さらに、常盤木学園高等学校の皆様による箏と茶の体験では、さわやかな秋空の下での箏の音色に深く親しんでおられました。

植物園本館ロビーでは、東北大学交響楽団有志による弦楽四重奏のコンサートが開催されました。華麗ないけばなの展示を背景に、童謡・アニメ音楽からモーツアルトの弦楽四重奏曲まで多彩なレパートリーで多くの聴衆を魅了し、アンコール演奏も行われる程の好評となりました。

10時50分からは植物園内ガイド付き散策が行われました。園内を植物園・文学研究科の教員からの詳しい解説を交えながら巡ることで毎年好評をいただいているこの企画ですが、今年度は牧雅之植物園長・伊藤拓朗助教・柳原敏昭教授・引野亨輔准教授によるガイドで開催されました。園内に残る中世の板碑について、両先生それぞれのご専門の立場から興味深い解説に、ご参加の皆様は耳を傾けていらっしゃいました。当日は37名の方々がご参加になりました。

昨年度に引き続き、この日限定で文学研究科棟3階に設けられた阿部次郎記念室が特別公開されました。年に一度の一般公開となるこの日に、昨年度の倍以上となる48名の方々にご覧いただきました。

午後の部では、尾崎彰宏名誉教授・総長特命教授による公開講演が開催されました。多彩なスライドを交えつつ進められたご講演は、19世紀ヨーロッパ画壇に対して日本の春画・浮世絵が与えた衝撃が、絵画における肉体表現のみならず時間や心性に関する変化をも迫るものであったというものでした。80分程の講演ではありましたが、受講者の皆様は先生が語られる濃密な西洋と日本の美の交錯にまさしく魅了されたようでした。

続いて、高校生俳句賞・吟行授賞式が開かれました。昨年度始まった紅葉の賀高校生俳句賞ですが、全国的にも数少ない大学主催の高校生向け俳句賞に、今年度は全国各地から総勢48名、96句の応募がありました。なかでも今年度は、宮城県内の各高校から数多くの投句があり、地元の高校生にも順調に定着してきているようです。第2回の受賞者として、渡辺誠一郎賞7句ならびに文学部長賞6句が発表されました。会場には、北海道・山形県から受賞者2名が会場に駆けつけ、諸事情により来場できなかった受賞者3名もZoomで授賞式に参加しました。渡辺誠一郎先生・長谷川冬虹(公一)名誉教授・盛岡大学学長からの句の発表と渡辺先生・木村文学部長より賞の授与が行われ、受賞者には賞品として渡辺先生自筆の句の色紙と文学部編集の書籍などが授与されました。受賞作の発表の後、渡辺先生と文学部長賞の審査に当たられた長谷川先生から受賞作についての講評があり、高校生の才能に非常に高い評価と期待が寄せられました。

続いて吟行授賞式が行われ、渡辺誠一郎賞三席、研究科長賞三席の発表と渡辺先生・木村研究科長からの表彰があり、受賞者には渡辺先生自筆の句の色紙など豪華賞品が授与されました。その後、渡辺先生・野家先生から講評をいただき、最後に受賞者から喜びの声が寄せられました。紅葉の賀という自然と文化の交えるひとときに対して、日常を離れて真剣に句と向き合った皆様の思いがあふれる時間でした。なお、文学研究科長賞二席には木村研究科長自身の見事な句が入賞し、思いがけないハプニングに研究科長自身も選者の野家先生もともに驚き、会場も大いに沸きました。

高校生俳句賞吟行の受賞作は、本ウェブサイト特設ページで公開されております。若い感性あふれる高校生の句、秋の一日を感じさせる吟行の句の数々を、ぜひご鑑賞ください。

文学研究科は今後もこのような市民のみなさまとの交流の機会を設け、社会連携に係る活動を推進してまいります。来年の紅葉の賀で再びお目にかかれるのを、心よりお待ちしております。

  • 牧雅之植物園長のご挨拶(オープニングセレモニー)

  • 木村敏明研究科長のご挨拶(オープニングセレモニー)

  • 尾崎彰宏名誉教授のご挨拶(オープニングセレモニー)

  • 野家啓一名誉教授のご挨拶(オープニングセレモニー)

  • 渡辺誠一郎先生のご挨拶(オープニングセレモニー)

  • 丹野霞園先生(オープニングセレモニー)

  • 小野宗智先生による野点の解説(オープニングセレモニー)

  • 引野亨輔先生による植物園ガイド散策

  • 柳原敏昭先生による植物園ガイド

  • 交響楽団有志による弦楽四重奏

  • 当日の紅葉

  • 生け花と一緒に(文学部スタッフ)

  • 生け花展示(植物園ロビー)

  • 尾崎彰宏名誉教授による公開講演

  • 渡辺誠一郎先生による高校生俳句賞講評

  • 長谷川冬虹(公一)名誉教授による高校生俳句賞講評

  • 野家啓一先生による吟行講評

  • 吟行の表彰

  • 高校生俳句賞・吟行授賞式後の記念撮影