PRO-pose.

社会を生きる先輩たちの
「プロのポーズ」とは

哲学を探求し、カレーを極める。 マーケティングプランナー 清水侑季さん 哲学を探求し、カレーを極める。 マーケティングプランナー 清水侑季さん

世界を相手にするダイナミズム。世界を相手にする
ダイナミズム。

「世界中の市場とダイナミックに関わることができる。それが仕事の醍醐味であり大きなやりがいとなっています」。
そう語るのは、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの企画マーケティング部門でマーケティングプランナーを務めている清水侑季さん。清水さんは現在、ホームシアター用プロジェクターと映画用プロジェクターのマーケティング業務を担当。アジア圏をはじめ、インド、南米、ロシア、そして中東諸国を担当エリアとして、各国のセールス担当者と日々コミュニケーションをとり、営業・販売のサポートや市場分析、マーケティングプランの策定までを行っている。
「B2Bビジネス(企業間電子商取引)担当部署なので、普段あまり目にできない高価格かつ高性能な業務用自社機器に触れられることも楽しいです。担当者とメールや電話でやりとりする際には英語も使います。学生時代に学んだことが基礎となっていますが、一方でもっと勉強しておけば、と思うことも多いですね」。

在学中に得た、人生で大切なこと。在学中に得た、
人生で大切なこと。

清水さんは東北大学進学の際、一年の浪人生活を経験。しかし、その時間こそが自分にとって大きなターニングポイントになったと振り返る。
「伊坂幸太郎さんの小説の影響で仙台に憧れ、現役受験では物理学と農学に挑みましたがダメでした。諦めきれず浪人生活を送るなかでふと“ハイデッカーが読みたい”と思い、木田元先生の著書にふれたのですが、独自のアプローチで物事の根源に迫っていくプロセスに引き込まれ、文学部で哲学を学ぼうと決めました」。
小さな頃から海外、特にインドへの興味が高かったと語る清水さんの思いは、文学部入学とともに個性的に花開いていく。
「非公認でしたが『東北大学カレー部』を作ったんです。インドへの興味のうち、実はかなりの部分を大好きなカレーが占めていたのですが、哲学の探求と同じように、学生時代には真剣にカレーの道も極めていきました」。
在学中、カレー店でアルバイトを続けたことも、また一年間の休学時にインドに渡り、現地企業で半年間インターンシップを行ったことも、その根底には“カレー好き”という自分自身のアイデンティティがあったと語る清水さん。ちなみに現在、社内有志100人を束ねるカレー部の部長も務めているが、個性豊かな人間が集う世界的企業にあっても、“カレーの清水”といえば、入社1年目からその存在を知らないものはないという。
「哲学もインドもとても大きな存在ですが、そのおかげでカレーの深い魅力を知った。自分の人生にとっては大きなことでした」。

日本とインドをつなぐ架け橋に。日本とインドをつなぐ
架け橋に。

今後、仕事の上では海外駐在員となることを目標としている清水さん。もちろん希望先はインドだ。
「カレーのこともありますが、インドや発展途上国をビジネスで支援していきたいという思いです。10年後の世界の中心はインドであり、その頃には日本にとっても最重要のパートナー国になると考えています。日本とインドをつなぐ架け橋のような存在になれたらうれしいですね」。
哲学、インド、カレー、架け橋。静かに熱く言葉を発する清水さんには、ハイデッカーに関する授業の際に戸島貴代志先生から教わった言葉がいつも胸にあるという。
「人生でいちばん大きなものは最初に入れないと入らない、という言葉です。これは人間を壺などの器に例えた表現ですが、とても腑に落ちたことを覚えています。自分の場合それは、哲学への学びを通して出会ったカレーだと思っています。哲学や倫理学の知見はよく、社会に出てからどう生かすのか、といった観点で語られたりしますが、自分の場合は人生のひとつのかたちを見いだすことにつながりました。学びとしてこれ以上のことはありません」。
世界中の市場動向を視野に入れつつ仕事に向き合う一方、自分自身の生き方そのものにも真摯に向き合い続ける清水さん。日本とインドとの架け橋として活躍する日も遠くないだろう。

清水 侑季Yuki Shimizu

2016年3月、文学部人文社会学科哲学専修卒業後、ソニー株式会社に入社(現ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社)。卒業論文は「カント『判断力批判』における美感的判断力について-ガダマーとアーレントによる議論を踏まえて-」。