PRO-pose.

社会を生きる先輩たちの
「プロのポーズ」とは

生涯をかけて、 仏教を究める 大学講師 モリス・ ジョンさん 生涯をかけて、 仏教を究める 大学講師 モリス・ ジョンさん

恩返しの思いで、 機会をつくる。恩返しの思いで、
機会をつくる。

現在、駒沢女子大学人文学部国際文化学科で講師を務めているモリス・ジョンさん。
「ワークショップも含めた英語におけるコミュニケーション技法をはじめ、グローバルビジネスの基礎となるテクニック、そして食文化、消費文化、日常生活など、英語による日本文化史を教えています」。
その人柄を表すように、優しく丁寧な日本語で語るモリスさんには、学生に教える立場となって、さらに意識を強めたことがあるという。
「“機会をつくる”ということです。東北大学文学研究科で学んでいた際、指導教員の佐藤弘夫先生に教えていただいた言葉であり考え方です。先生は学生のためにいろいろな機会を作ってくださいましたが、自分はいま、目の前にいる学生たちの可能性や将来のために、どんな機会をつくってあげることができるのだろうか。佐藤先生への恩返しの思いを込めて、常にそれを考えながら授業を行っています」。

東北大学と仙台、 その好環境。東北大学と仙台、
その好環境。

イングランドに生まれノースヨークシャーで育ったモリスさんは、10代後半で政治に興味を持ち、地元の下院議員のアシスタントとして活動。その後、進学したブリストル大学では哲学と神学を学んだ。
「やがて仏教に強く惹かれるようになりました。また、柔道や空手にも真剣に取り組んでいたので、日本に行けば英語とともに柔道を教えながら、仏教を探求することができるのではないかと考えました」。
JETプログラム(外国青年招致事業)で来日したモリスさんは当初、島根県下の高校で外国語指導助手に着任。その間、日本と東アジアの文化に対する関心がさらに高まっていった。
「島根での契約期間を終えた後、一度イギリスに戻り、ロンドン大学(SOAS)に入学しました。仏教研究を続けるうち、空海、弘法大師、出羽三山、即身仏など、自分が納得できるまで研究をするなら東北大学がもっともふさわしいと思い、日本に戻ることを決めました」。
一連の経緯を“日本への帰国”と表現するモリスさん。2006年に学部研究生として、その帰国が実現した。
「東北大学文学部では先生方の教えはもちろん、蔵書、資料、研究論文、どれも質が高く、素晴らしい環境に身を置くことができて嬉しかったです」

仏教の魅力を、 日本の学生に。仏教の魅力を、
日本の学生に。

日本に帰国し、東北大学文学部の研究生として、再び仏教への学びを深めていったモリスさん。大学院後期課程修了までの9年間には、当時、内モンゴルからの留学生だった奥様と結婚した。
「結婚もひとり目の子どもの誕生も仙台です。研究者として見た場合の東北大学の素晴らしい環境、そして、ひとりの人間として家族や家庭を育むことにも素晴らしかった仙台の環境。どちらもかけがえのない大切なものでした」。
現在はまだ、英語に関する授業を中心に行っているモリスさん。もちろん将来的には仏教学を教えたいという思いを抱いている。
「仏教は生涯ずっと研究していきたい学問です。その魅力をひとりでも多くの学生にわかってもらうことも自分の使命だと思っています」。
これまで機会に恵まれてきたと語るモリスさん。佐藤先生の教えを胸に、日本人らしい気持ちで、機会をつくり、教え子たちの知見の可能性を広げてくれることだろう。

モリス・ジョンJon Morris

2015年3月、大学院文学研究科日本思想史専攻修了後、文部科学省に採用。駒沢女子大学で教職に就く。博士論文は「The Bodily Incorruptibility of Holy Men and Women in Pre-Modern Japan and Europe (腐敗せざる遺体−前近代日本と欧州における聖人の遺体をめぐって)」。(研究課題は、弘法大師入定説、即身仏、比較宗教論)