PRO-pose.

社会を生きる先輩たちの
「プロのポーズ」とは

あらゆる資料を重視し、深く考えること。 仙台市職員 信太大樹さん あらゆる資料を重視し、深く考えること。 仙台市職員 信太大樹さん

無縁だったシステムだからこそ、謙虚に学ぶ姿勢で毎日に臨む。無縁だったシステムだからこそ、
謙虚に学ぶ姿勢で毎日に臨む。

現在、仙台市職員として、こども若者局こども支援給付課に在籍している信太大樹さん。
「子どもに対する手当やさまざまな医療費の助成などを担当する部署ですが、その中で私はシステム運用や制度の整備など、助成に関する取りまとめ全般を行っています」。
業務ではシステム運用の管理や円滑化を推進する立場にあるが、国や県などからの問い合わせに対応したり、申請に必要な書類を作成したりという役割も担っている。時には各区役所を回り、システム運用に対する疑問や不明点などに応え、またシステムを開発する企業との打ち合わせや調整も重ねている。
「現場の職員から〝こうなったらもっと使いやすくなる〟という声を得た場合には、市役所のシステム運用をメインで担当する部署やシステム開発企業にフィードバックすることで、制度を利用する市民みなさまをはじめ、より誰もが使いやすい利便性を向上させていく役割も担っていると言えます。文学部出身なのでシステムのことはあまり得意でない分、わからないことにぶつかると自分で調べたり、周囲に聞いたりしながら学ぶ姿勢で毎日に臨んでいます」。

大学院への進学を決心した、籠橋先生からの言葉。大学院への進学を決心した、
籠橋先生からの言葉。

信太さんの生まれは秋田県。本人いわく〝普通の少年〟だったということだが、読書はずっと好きだったと振り返る。
「シャーロックホームズなどの推理小説やミステリをよく読んでいましたが、小学校高学年くらいからゲームをきっかけに日本史や戦国時代などの歴史に興味を持つようになりました」。
大学進学時には日本史を学ぼうと関東の大学と東北大学、その2つの文学部に志望を固めて受験を決意。その際には担任の先生のアドバイスも大きな影響となった。
「先生からは、秋田と同じ東北地方のトップを目指すのがいいのではないかと言われました。それで東北大学のオープンキャンパスに参加しましたが、環境や雰囲気を含めて自分自身が納得でき、親も同じ東北内であればと応援してくれました」。
こうして東北大学文学部に入学。2年次には日本史研究室を選択し、籠橋俊光先生の指導のもと、研究室の仲間たちと切磋琢磨しながら知見を深めていった。しかし集大成となる卒業論文に関しては、結果的に自分が納得できるレベルのものができなかったという。
「その思いを胸に抱えながら卒論の指導教員でもあった籠橋先生と二人で話した時に、先生から〝自分が本当に好きだと思えるものを研究テーマにすることが大事〟と言われて、このまま中途半端で終わりたくないと覚悟が決まり、大学院への進学を決めました」。
2年後の修士論文では、地元秋田の江戸時代中期をテーマとした政治史をまとめた。
「籠橋先生から〝学部の時の卒論と比べてしっかり形になっていて進学した2年間での成長を感じた〟と評価されてとても嬉しかったし自信にもなりました」。

深く考えることを通して、仕事に向き合っていく。深く考えることを通して、
仕事に向き合っていく。

仙台市職員として働く今でも、籠橋先生の教えや研究室での経験がいつも胸の中にあるという信太さん。
「文学部そして文学研究科の6年間で学び、身についたこと。それは何かを考える際には資料を重視する、ということです。現在の仕事でも法令をはじめとしてさまざまな資料やデータを証拠としてあたり、その上に自分自身の考えを加えていく過程を大切にしています。〝まず資料ありき〟。地に足をつけて考えていくための役割が資料でありデータであるということは、研究室でも教訓となっていました」。
信太さんは大学院修了後、一旦は民間企業に就職したものの、社会に出てから感じた自分の思いを貫くために転職した経緯を持つ。
「以前の仕事で取引先のお客様と対応したことも大きな経験でしたが、やがてもっといろんな人の役に立ちたいと考えるようになり、行政への転職を決心しました。大学進学から仙台で暮らし始めましたが、自然も多く住みやすい街だと思っていたので、ずっと仙台に住み続けながら、この街のために頑張っていきたいという気持ちも強かったですね」。
東北大学在学期間、そしてこれまでの社会経験を踏まえて、信太さんには常に心がけていることがあるという。
「深く考えることです。見た目や一時的なことに流されず、さまざまな資料をベースに、極力フラットな目線で考えるようにしています。現実的には難しいかもしれませんが、大変とか面倒臭いといった一時の感情でなく、自分なりにしっかりと最終系を見据えて考えを進めて行こうと思います」。
少子化問題を例に挙げるまでもなく、子どもに対する政策や行政のあり方は今後ますます注目されていく。深い考えによって導かれていく信太さんならではの解答に期待したい。

信太 大樹Daiki Shida

2017年3月、文学部卒業。2019年3月大学院文学研究科日本学専攻日本歴史学講座日本史分野修了後、一般企業に就職。2021年8月、転職して仙台市役所に入庁。修士論文は「近世中期の藩政と家老-秋田藩家老今宮義透を事例に-」