教員のよこがお

教授 三浦 秀一 MIURA Shuichi

所属

心のひだ、智慧の光

家族が血を流しあう骨肉の争いは、洋の東西を問わず常に聞見される出来事だが、儒家の古典『孟子』にも、舜という聖王の地位や生命をねらうかれの父親および異母弟の説話が載る。「父親は舜に井戸をさらわせた。舜が井戸におりると父親は井戸を蓋で蔽った。弟は兄の財産を占有すべく舜邸に乗り込んだ。だが舜はすでに帰宅していた。脱出の方策を講じていたのだ。弟は予期せぬ展開に忸怩とした。一方、舜は、ふだん交流のない弟の来訪を歓迎した」。舜のこの態度は偽装ではないのか。そう質問する弟子に対し孟子は諭した。「弟は兄を慕ってやって来た。舜の喜びに偽りのあるはずはない」。
性善説に依拠する孟子のこの解釈を受け継ぎ、南宋の朱子は、舜の喜びを聖人の本性である「道理」の発現ととらえたうえで、到底まねのできぬ態度かもしれないが、人間は誰もがこの「道理」をそなえているはずだ、と論を拡げた。明代末葉、朱子説に対する異論が湧き起こった。やむを得ざる偽装こそが舜の真情だとする見解も示された。しかしそれも意見の一端、心のひだに潜り込み、智慧の光を多方から照射する文献との出会いに、わたしは喜びを感じている。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 主要担当科目
    中国思想概論、中国思想基礎講読、中国思想各論、中国思想演習
    略歴
    東北大学文学部卒業、同大学大学院文学研究科(中国哲学講座)単位取得退学、京都大学人文科学研究所(東方部)助手、東北大学文学部講師等を経て、現職。その間、四川大学宗教学研究所、ハーバード大学イェンチン研究所、中央研究院歴史語言研究所等において長期研修、学術交流をおこなう。
    学位
    博士(文学)
    研究分野
    中国近世思想史
    研究課題
    中国近世における儒道仏三教思想の諸相
    宋明老荘学
    明代の科挙と出版
    研究キーワード
    心学、老荘学、科挙
    所属学会等
    日本中国学会、東方学会、等
    研究者紹介DB
    http://db.tohoku.ac.jp/whois/detail/6085409a3dda4dae201bc3a11f26bc51.html
  • 主要著書
    『中国心学の稜線-元朝の知識人と儒道仏三教』、『科挙と性理学-明代思想史新探』
    主要論文
    明朝提学官与各省郷試、The Profound Intent of Valuing Both Men and Laws、王門朱得之の師説理解とその荘子注、等