教員のよこがお

准教授 杉本 欣久 SUGIMOTO Yoshihisa

所属

どのように美術作品を見れば良いですか?

 それは、しばしば私に向けて発せられる問いです。「自分の感性で…」と答えるのは簡単ですが、それでは空をつかむような話に聞こえてしまうでしょう。美術研究に必要な「観る」力とは、作品を自身の眼でつぶさに観察し、情報を引き出すことを意味します。けれども、義務教育や高等教育においてそのような訓練はほとんど実施されていないことから、それを苦手とする人は少なくありません。試みに、ある作品を調査しなさいと学生に指示すれば、多くが実物を観察するより先に、それについて記された書物を探すことから始めてしまいます。このような姿勢では、いつまで経っても自身の眼で作品が観れないばかりか、作者やその人物をとりまく時代の精神に主体性を持って迫るのは困難でしょう。
 作品を置き去りにせず、そこからいかに的確な情報を読み取るのか、さらに読み取った情報をいかに適切な言葉で第三者に伝えるのか、この「インプット」と「アウトプット」の両面は私自身の課題でもありますが、「合理的に観、論理的に説明する」を合言葉に、学生とともに成長していける研究環境を目指していきたいと思います。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 主要担当科目
    日本近世美術史、日本絵画史、博物館実習
    略歴
    京都市生まれ。早稲田大学文学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科(芸術学科)修士課程修了後、公益財団法人・黒川古文化研究所(兵庫県西宮市)の研究員を20年勤め、現職に至る。
    学位
    博士(文学)
    研究分野
    日本近世絵画史
    研究課題
    18世紀における文化潮流と絵画表現の多様性について
    研究キーワード
    文人文化、身分・地域・時代精神と絵画表現、資料性評価(真贋弁別)、鑑定学
    所属学会等
    美術史学会、文化財保存修復学会、早稲田大学美術史学会
  • 主要著書
    1.慈雲尊者ーいつくしみの書[黒川古文化研究所,(2018)]杉本欣久編
    2.武士の描いた絵画[黒川古文化研究所,(2016)]杉本欣久
    3.円山応挙の門人たち[黒川古文化研究所,(2014)]杉本欣久
    主要論文
    1.小泉檀山の基礎資料についてー立原翠軒『上京日録』と狩野文庫本『檀山先生門人姓名録』を中心にー[美術史学,(40),(2019),21-83]
    2.東叡山寛永寺の絵師・関良雪と輪王寺門跡・公遵法親王、神道家・依田貞鎮ー「安楽律騒動」の渦中で生きた画家ー[日本近世美術研究,(1),(2018),21-90]
    3.妙法院門跡・真仁法親王と円山応挙の門人たちー円山応瑞・呉春・中村則苗・長沢芦雪・源琦ー[古文化研究,(16),(2017),99-170]
    4.江戸時代における古美術コレクションの一様相−古鏡の収集と出土情報の伝達−[古文化研究,(15),(2016),91-192]
    5.増上寺の学僧・忍海の作画と復古思想-江戸中期の徂徠学派にみる文化潮流‐[古文化研究,(14),(2015),61-124]
    6.八代将軍・徳川吉宗の時代における中国絵画受容と徂徠学派の絵画観-徳川吉宗・荻生徂徠・本多忠統・服部南郭にみる文化潮流-[古文化研究,(13),(2014),43-120]
    7.日本近世絵画の観察と資料性評価(真偽判別・鑑定)の理論ー「鑑定学」の構築にむけてー[古文化研究,(10),(2011),92-132]
    受賞
    第18回早稲田大学美術史学会賞(2007)
    報道
    妙法院のふすま絵、円山応挙・長沢芦雪らの作と判明[朝日新聞(2017.5.12)]