教員のよこがお

准教授 仁平 政人 NIHEI Masato

所属

驚きをもって
表現に立ちどまる

 私の研究の出発点は、文学部の学生だった頃に図書館でふと『川端康成全集』を手にし、そこに収められた「青い海黒い海」や『みづうみ』といった実験的な小説に目眩がしそうなくらい驚かされたという経験にあります。これらの奇妙な小説は一体何なのか? そして、この作家がなぜ一般には「日本的」・「伝統的」といったイメージで理解されているんだろう? こうした単純な疑問を起点として、一方では20世紀の日本における前衛的な文学の諸相について探究し、他方では「日本」や「伝統」、あるいは「地方」をめぐるイメージの構築と文学との関わりについての検討に取り組み続けています。
 文学作品の表現に驚きをもって立ちどまり、その具体的なありようを丹念に読み解き、また表現を取り巻く様々な文脈に目を凝らすこと。それは、単に作品を理解するというだけにとどまらず、私たちの日常的な思考や感性を問い直し、また文学の背後に横たわる文化的・社会的・歴史的な問題に目を向けることにもつながっています。このような文学研究の面白さと難しさとに、今後もたゆむことなく向き合い続けたいと考えています。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 主要担当科目
    日本文学演習、日本文学基礎講読、日本文芸形成論特論
    略歴
    1978年7月、茨城県に生まれる。
    東北大学文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程後期三年の課程修了。
    東北大学文学部研究助手、弘前大学教育学部専任講師を経て、2019年4月から現職。
    学位
    博士(文学)
    研究分野
    日本近現代文学
    研究課題
    1920~30年代のモダニズム文学の研究
    高度経済成長期における前衛的な文学・文化の研究
    研究キーワード
    日本近現代文学、比較文学、モダニズム、伝統の構築
    所属学会等
    日本近代文学会、日本比較文学会、日本文学協会、日本文芸研究会、昭和文学会、横光利一文学会、川端康成学会、青森県郷土作家研究会
  • 主要著書
    『川端康成の方法―二〇世紀モダニズムと「日本」言説の構成』(東北大学出版会、2011年)
    『寺山修司という疑問符』(共編著、弘前大学出版会、2014年)
    主要論文
    ・仁平政人「「どこに行っても恐山はある」―一九六〇年代の文学における「恐山ブーム」と寺山修司―」(『寺山修司研究』第11号、2019年)
    ・仁平政人「戦時下のモダニズムと〈郷土〉―雑誌『意匠』・沢渡恒における「東北」―」(高橋秀太郎・森岡卓司編『一九四〇年代の「東北」表象 文学・文化運動・地方雑誌』東北大学出版会、2018年)
    ・Nihei Masato「Spiritualism and modernism in the work of Kawabata Yasunari」(Joshua Solomon訳、『Japan Forum』vol30、2018年)
    ・仁平政人「「旅行」する言葉、「山歩き」する身体 ―川端康成『雪国』論序説―」(『日本文学』第66巻第6号、2017年)
    ・仁平政人「「惜別」と『大魯迅全集』―方法としての「孤独者」―」(『太宰治研究』第25巻、2017年)
    受賞
    第29回岡崎義恵学術研究奨励賞(2012年)