教員のよこがお

准教授 引野 亨輔 HIKINO Kyousuke

所属

お寺の経蔵を覗くと、
日本思想史が分かる!?

 「本棚を見れば、その人が分かる」と良く言われますが、僕の研究(兼趣味)は、地域のお寺でご住職に頼み込み、経蔵に入って蔵書を調べることです。
 そんなことをして何が分かるのかと、不思議に思う人も多いことでしょう。しかし、「本棚を見れば、その人が分かる」ように、お寺の経蔵を覗くと、いろんなことが分かってきます。例えば、あるお寺に所蔵される版本を調べていて、「こんなもの、信用するに足りない偽書だ」という旨の書き込みを目にしたことがあります。この書き込みを行った僧侶は、自著を出版するような人物ではありませんでしたが、出版によって権威付けられた知識と真摯に向き合い、批判的な思索を行っていたわけです。情報があふれる現代社会において、僕たちは与えられた情報への批判精神をついつい忘れがちです。しかし、経蔵のなかで見付けた名も無き僧侶の批判精神は、それとは対照的に鋭いものであり、鮮烈な印象を受けた覚えがあります。
 ちなみに、思想史と聞くと、もっぱら歴史の教科書に太字で記される有名人の著作を取り上げるものと思う人が多いでしょう。しかし、地道な調査で見えてくるこうした「思想」の欠片も、思想史の大切な素材ではないでしょうか。まだ道半ばですが、今後も調査を続け、いずれは『お寺の経蔵から覗いた日本仏教史』を書き上げたいと思っています。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 主要担当科目
    日本思想史特論(大学院)
    日本思想史概論、日本思想史各論、日本思想史基礎講読(学部)
    略歴
    兵庫県生まれ。広島大学文学部史学科卒業、同大学院文学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、福山大学人間文化学部准教授、千葉大学大学院人文科学研究院准教授を経て東北大学大学院文学研究科准教授
    学位
    博士(文学)
    研究分野
    日本仏教史、日本近世出版文化論
    研究課題
    日本近世における商業出版の成立と仏教知の変容
    研究キーワード
    商業出版、宗派仏教、寺院蔵書
    所属学会等
    歴史学研究会、日本宗教学会、日本思想史学会
  • 主要著書
    近世宗教世界における普遍と特殊[法蔵館、(2007)]引野亨輔
    主要論文
    仏教書と民衆の近世[現代思想46-16、(2018)、217-228]引野亨輔
    日本近代仏書出版史序説[宗教研究90-1、(2016)、1-26]引野亨輔
    江戸時代の地誌編纂と地域意識[歴史評論790、(2016)、5-18]引野亨輔
    「読書」と「異端」の江戸時代[書物・出版と社会変容12、(2012)、27-60]引野亨輔
    近世仏教における「宗祖」のかたち[日本歴史756、(2011)、71-85]引野亨輔