教員のよこがお

准教授 マリヌッチ ローレンヅォ Marinucci Lorenzo

所属

哲学者として、
「美」と「雰囲気」の探求

ローマで生まれ育ち、子供のころから非常に魅力的な古代ローマの文化に触れてきました。西洋文化の起源ともいえる土地で生活する中で、幼い頃から異文化に対しても強い関心を持ちました。高校性の時に西洋哲学を学びはじめて、それと同時にローマの日本文化会館で日本語の勉強も始めました。その時に愛読した日本の作家は川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎でした。「将来的に原語でも読みたい」と思うと同時に、翻訳の重要性を初めて実感しました。ローマ大学の哲学部に入学後、西洋哲学(特に、現象学)を色々学びましたが、大学の講義には非ヨーロッパ思想に関するものは全くありませんでした。そのため、自分で日本の哲学者の本を読むことにしました。特に、西田幾多郎、九鬼周造、和辻哲郎等に強い感銘を受けました。大学卒業後はベルリンに引っ越し、しばらく翻訳者として働いていました。哲学や他分野の論文の翻訳だけでなく、芥川、子規、漱石の句集や俳句論をイタリア語へ訳しました。この翻訳の仕事を通して俳句が好きになりました。そうした経験から、自分の興味や研究対象は、西洋思想も東洋思想も、哲学も文学も含むようになりました。ベルリンから日本へ移った後、和辻哲郎の『風土』をイタリア語へ翻訳している時、偶然にもヘルマン・シュミッツの雰囲気論と出会ったことがきっかけとなり、ヨーロッパにもどって「風の姿・現代日本美学における空気と雰囲気」という博士論文を書きました。東洋思想を取り扱いながら、「形」や「美」のような概念よりも、「風」、「気」、「空」という体験を美学・感覚論の出発点とし、東西古今の哲学を論じました。博士号所得後は、風と雰囲気の研究を新しい方向へ推し進めるべく、「匂い」の哲学的・美的特徴に着目して、京都大学で日本思想と嗅覚的なものについて研究を進めました。これらの研究を総括するために、現在は「匂いの思想」をテーマに英語の本の執筆を進めています。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 主要担当科目
    美学(美学・西洋美術史概論 美学・西洋美術史各論)、イタリア語(初・中・上)
    略歴
    ローマ大学「ラ・サピエンツァ」で卒業して、ローマ大学「トル・ベルガータ」で博士号所得しました。京都大学でキャノン・ヨーロッパ・フェロー(2020年)と日本国際交流基金フェロー(2021年)としてポスドクしました。2022年秋から東北大学で准教授として着任しました。
    学位
    博士
    研究分野
    美学、西洋思想、日本思想、現象学、雰囲気論
    研究課題
    匂いと嗅覚の思想
    研究キーワード
    雰囲気、匂い、俳諧、日本哲学
    所属学会等
    Atmospheric Studies (Sensibilia), European Network of Japanese Philosophy (ENOJP), Mushin’en Research Group, Kobe Institute for Atmospheric Studies (KOIAS), イタリア東方学研究所(ISEAS)
    研究者紹介DB
    https://www.r-info.tohoku.ac.jp/ja/75495a2121359c504c8ec21d2fd0f3a0.html
  • 主要論文
    1.Lorenzo Marinucci, “Poetry and Decadence: Reading Nietzsche with Karaki Junzō”, Scenari, Number 15, pp. 85-115 (2021)
                    
    2.Lorenzo Marinucci, “Images of Wind: A Japanese Phenomenology of Imagination as Air”, in Greco, F., Krings, L., Kuwayama, Y. (eds.), Übergänge-Transitions–移り渉り: Crossing the Boundaries in Japanese Philosophy, Chisokudō Publications, Nagoya, pp. 220-25 (2020)

    3.Lorenzo Marinucci, “Iro 色: A Phenomenology of Color and Desire”, European Journal of
    Japanese Philosophy, Number 5, pp. 193-226. (2020)

    4. Lorenzo Marinucci, “Hibiki and Nioi: A Study of Resonance in Japanese Aesthetics”, Studi di estetica, Numero 20, pp. 117-142 (2020)                   

    5. Lorenzo Marinucci, “Japanese Atmospheres: Of Sky, Wind and Breathing”, in Griffero, T. (ed.), Atmospheres and Aesthetics: A Plural Perspective, Palgrave, London, pp. 93-118 (2019)
    受賞
    日本国際交流基金フェロー2021
    キャノン・ヨーロッパ財産フェロー2020