教員のよこがお

准教授 菊地 恵太 KIKUCHI Keita

所属

日本語表記の
「正しさ」と「緩さ」と

 普段、「正しい日本語を使おう」とか、「漢字を正しく読み書きできるようにしたい」と思っている人も多いかも知れません。私自身も、正しい日本語や文字は昔から明確に決まっているものだと思っていましたし、言葉を正しく使わなければならないとも思っていました。
 しかし、大学に入って日本語学(国語学)という学問分野に触れるようになり、近世以前の古い文献を目にしたとき、現在に比べて文字表記の自由度が高いことに驚かされました。例えば現代では、漢字の形や送り仮名の付けかた、仮名遣いなど、ある程度の決まりが存在していますが、古くは同じ筆者による同じ文献の中でも、漢字の形や仮名遣いが統一されていないこともよくあります。そもそも、平仮名や片仮名の形も統一されていませんでした。
 もっとも、現代においても日本語の文字表記のしかたが完璧に統一されているかというと、そうとも限りません。言語や文字の研究をしていると、何が「正しい」のか「誤用」なのか、一概に決めるのは難しいということも分かってきます。
 そんな日本語の文字表記の懐の深さに惹かれ、文字使用の実態や人々の意識を探ろうと現在も研究を続けています。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 主要担当科目
    日本語学概論、日本語学各論、日本語学講読など
    略歴
    東北大学文学部人文社会学科卒業、東北大学大学院文学研究科言語科学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。宮城学院女子大学助教、同准教授などを経て現職。
    研究分野
    日本語学(日本語史)
    研究課題
    文字・表記史、特に日本における漢字字体・異体字の変遷、漢字の部首分類・部首配属など。
    研究キーワード
    漢字字体、異体字、部首
    所属学会等
    日本語学会、訓点語学会、日本文芸研究会、日本漢字学会
    研究者紹介DB
    https://www.r-info.tohoku.ac.jp/ja/12d5eb421c873aa7f944af8da6ac055e.html
  • 主要著書
    『日本略字体史論考』(武蔵野書院 2022年)
    『漢字文化事典』(項目執筆、丸善出版 2023年)
    主要論文
    「漢語「ハツラツ」(潑剌・潑溂)の用字 ―明治期以前の用例について―」『日本漢字學會報』6(2024)
    「略字を巡る字体意識の問題 ― 「万(萬)」の場合」―」『日本漢字學會報』1(2019)
    「畳用符号を利用した略字体の成立と展開」『日本語の研究』14-2(2018)
    「略字体の成立と使用拡大の一側面 ―「釈」の旁「尺」を例として―」『訓点語と訓点資料』136(2016)