教員のよこがお

助教 武藤 奈月 MUTO Natsuki

所属

物語を巡って

 中世、主に12世紀から13世紀に書かれた物語を研究しています。当時の作品は、同時代の社会における騎士と貴婦人の物語だけではありません。古代ローマ神話やアーサー王伝説、アレクサンドロス大王伝説、東方のビザンチン世界など、様々な題材が取り上げられていました。物語作者たちは「ここではないどこか」から着想を得ながら、当世風に書き換えていたのです。ランスロットやトリスタンなど、特に人気のあった登場人物についての物語は各国語で次々と書き継がれていきました。
 さて、そんなことを少しも知らなかった子供の頃の私は、「ここではないどこか」に憧れ、東西のファンタジー小説を好んで読んでいました。その中には、中世ヨーロッパ世界から着想を得た作品もあったのでしょう。大学でフランス中世文学の講義を受けた時、「これだ!」と思い、すべてがつながったような不思議な感覚を覚えました。
 現代日本でも、中世ヨーロッパ風のファンタジー小説や異世界漫画、RPGゲームが数多く生まれています。なぜ、価値観がめまぐるしく変化していく社会において、私たちは中世に惹かれるのかー、といった問題も考えていけたらと思っています。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 主要担当科目
    フランス文学概論Ⅰ、フランス文学演習Ⅲ
    略歴
    東北大学文学部人文社会学科卒業。ベルギー・リエージュ大学大学院修士課程、東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。フランス・ソルボンヌ大学大学院博士課程修了。日本学術振興会特別研究員等を経て、現職。
    学位
    博士(文学)
    研究分野
    中世のフランス語文学、特に12世紀から13世紀の物語(roman)
    研究課題
    12・13世紀の物語における驚異
    研究キーワード
    フランス文学、中世文学、アーサー王物語、古代物語、驚異、語り
    所属学会等
    日本フランス語フランス文学会、東北大学フランス語フランス文学会、国際アーサー王学会、西洋中世学会
    研究者紹介DB
    https://www.r-info.tohoku.ac.jp/ja/cbddc807fc047b4dc83733dfe3ce6bec.html
  • 主要著書
    【分担執筆】「古典古代の受容」、西洋中世学会編『西洋中世文化事典』、丸善、354-355頁、2024年12月。
    主要論文
    Le merveilleux dans les romans d’antiquité, thèse de doctorat, Sorbonne Université, 2023.

    「古代物語(roman d’antiquité)の研究動向」、『西洋中世研究』、第14号、188-201頁、2022年12月。

    「クレチアン・ド・トロワにおける香り」、『フランス語フランス文学研究』、第120巻、21-34頁、2022年3月。

    「エニッドとペルスヴァル、クレチアン:『エレックとエニッド』と『聖杯の物語』における視点の交錯」、『仏語仏文学研究』、第53号、3-20頁、2020年6月。