教員のよこがお

准教授 氷見野 夏子 HIMINO Natsuko

所属

描かれた場所から
実在の場所へ、
そして再びイメージへ

 元々絵や彫刻が好きで、大学で美術史を学び始めたところ、古代ローマの壁画に出会いました。二千年前に描かれたとは思えない色鮮やかなフレスコ画には、神話場面や風景、静物、肖像、建築など、様々な題材が描かれていますが、とりわけ壁一面に木々や花、鳥を描いて、室内にいながらあたかも庭の中にいるように錯覚させる、庭園画と呼ばれるタイプの壁画に興味を持ち、学部、修士と勉強しました。そのうち、描かれた庭園と密接な関わりのある、古代ローマにおける現実の庭園についても知りたいと思うようになった頃、イタリアのピサに留学して博士課程を送る機会に恵まれ、斜塔で有名なトスカーナの街で四年余り学びました。それまでは主に美術史を勉強していたのですが、ピサでは考古学、碑文学、歴史学、文献学の授業に出て、古代ギリシア・ローマ世界について手に入るだけの物質、イメージ、テクスト資料を駆使してアプローチする、という研究態度を身に着けました。今も日々四苦八苦して勉強しながらではありますが、自分が研究に使える道具が増えたことで、追究できる疑問の幅も広がってきたように思います。博士論文では、かつて古代ローマにあった「サルスティウスの庭園」と呼ばれる場所がどのような空間だったのかを明らかにすることを目指しました。最近は、造形イメージと場所とのかかわりに興味を持っています。実際に絵画や彫刻が置かれた場所についてや、ある場所から別の場所へ作品が移動されること、あるいは絵やモザイクや彫刻に表象された場所について、少しずつ勉強しています。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 主要担当科目
    美学・西洋美術史各論、美学・西洋美術史演習
    略歴
    東京大学文学部美術史学専修課程卒業、東京大学人文社会系研究科美術史専門分野修士課程修了、同博士課程単位取得退学、ピサ高等師範学校(イタリア)文哲学部古典古代学科博士課程修了(Ph.D.)。
    学位
    博士(古典古代学)
    研究分野
    古代ギリシア・ローマ美術史
    研究課題
    古代ローマにおけるモノ、イメージ、場所の関係性
    研究キーワード
    古代ローマ、彫刻の再利用、場所の歴史
    所属学会等
    美術史学会、地中海学会、アメリカ考古学協会
  • 主要論文
    Natsuko Himino, "Three Classical Niobids from the Horti Sallustiani: Augustan Pedimental Group or Hadrianic Ensemble?," in Gianfranco Adornato, Miguel John Versluys, Suzan van de Velde (eds.), The Shock of the Old/New?, Brill.[2025年内出版予定]
    氷見野夏子「ポンペイ、「黄金の腕輪の家」の二つの壁画工房―庭園画の制作状況と図像プログラムの考察―」、『美術史』第192冊、2022年、pp. 187-202.
    Natsuko Himino, Displicebat ei habitare in palatio. Horti Sallustiani: Topography, Textual sources and sculptures, 2 Vols, Doctoral Thesis, Scuola Normale Superiore di Pisa (Supervisor: Prof. Gianfranco Adornato), Academic Year 2023/2024, January 2025.