教員のよこがお

助教 劉 海燕 LIU Haiyan

所属

なぜその表現で交渉は動くのか――日本語交渉談話に潜む表現の「押し」と「引き」の力を探る

 「強く言えば、交渉はうまくいく」――本当にそうでしょうか。
 実は、交渉を前に進めるのは、強く押す表現だけではありません。あえて引く、ぼかす、譲る、間を置くといった、一見控えめに見える「引き」の表現も、相手の意思決定を促し、合意に導く重要な力を持っています。
 私は、実際の交渉会話データをもとに、「押し」と「引き」の言語表現が織りなす交渉のダイナミズムを研究しています。例えば、「ぜひお願いしたいのですが」「今すぐ決めたいので」といった相手に強く働きかける「押し」の表現がある一方で、「確かにおっしゃるとおりですが」といった緩和を伴う「引き」の表現も見られます。交渉の駆け引きにおいて、どのような「押し」と「引き」の表現が用いられるのか、また、交渉参加者の立場や役割関係、交渉の進行段階によってそれらがどのように選択され、その選択が交渉の展開や成否にどのような影響を及ぼすのかに関心を持っています。さらに、交渉は提案、主張、譲歩、再調整といったやりとりの積み重ねによって進行し、やがて交渉の「山場」に至ります。どのような表現がその山場をもたらし、なぜその局面でその表現が選択されるのかにも注目しています。
 交渉における「押し」と「引き」の言語メカニズムを解明し、日本語コミュニケーションの奥深さに迫っています。コミュニケーションの本質を、「交渉プロセス」という視点から再考しています。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 略歴
    中国江蘇海洋大学外国語学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士前期課程修了、同大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。東北大学大学院文学研究科学術研究員、研究助手を経て現職。
    学位
    博士(文学)
    研究分野
    日本語学、社会言語学、談話分析、語用論
    研究課題
    日本語における交渉談話の研究
    研究キーワード
    交渉談話、談話の構造、交渉プロセス、言語戦略、コミュニケーション
    所属学会等
    社会言語科学会、日本語用論学会、日中対照言語学会
  • 主要論文
    1.劉海燕・甲田直美(2025)「交渉過程における話者間の均衡維持とポライトネス機能の可視化」『日本語用論学会第27回大会発表論文集』20,pp.362-369.
    2.劉海燕・甲田直美(2024)「交渉談話における配慮-ビジネスコミュニケーションと日本語-」『日本語用論学会第26回大会発表論文集』19,pp.278-285.
    3.劉海燕(2023)「交渉談話における「非限定表現」」『国語学研究』62,pp.101-115.
    4.劉海燕(2022)「交渉談話に見られる限定表現の使用と主張態度の調整」『第46回社会言語科学研究大会論文集』, pp.54-57.
    5.劉海燕(2022)「談話構成要素から見た交渉談話の展開構造の特徴-「理由説明」に着目して-」『文化』85(3,4), pp.70-90.
    6.劉海燕(2022)「値下げ交渉談話における「限定表現」と「非限定表現」の使用-ポライトネス理論の観点から-」『日本語コミュニケーション論集』11, pp.23-31.
    7.劉海燕(2020)「交渉場面における談話の展開構造-値下げの交渉場面を中心に-」『言語科学論集 』24, pp.65-77.