教員のよこがお

教授 長岡 龍作 NAGAOKA Ryusaku

所属

美術から人間を考える

「美術」という言葉は、明治5年(1872)にドイツ語から翻訳されて作られました。つまり、江戸時代以前に「美術」という言葉はありません。けれども日本では古くから、今日我々が「美術」と呼んでいるものが数多く生み出されてきました。それはなぜなのでしょう?「美術」とは、言い換えれば視覚的な表現です。視覚的な表現には、言葉以上にさまざまな内容を含めることができます。例えばそれは、美しさや崇高さや敬虔さなどです。古来人々は、我々が想像する以上の切実さで視覚的な表現を求めていたと考えられます。「美術史」はそうした人間の精神を、美術作品を通して考える学問です。その課題に応える私の研究は、目下次の三つを柱としています。
①日本各地の仏像を調べ、詳細な情報と写真を一般に公開する。
②仏教にとって普遍的な仏舎利信仰の美術を、アジア各地で調査し比較研究する。
③古代日本の他界観を分析し、仏教美術の意味と機能を追究する。
 これらの研究を通して、宗教にとって「美術」がいかに不可欠なものだったかを示したいと考えています。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 主要担当科目
    東洋日本美術史概論、東洋日本美術史基礎実習、東洋日本美術史各論・特論、東洋日本美術史演習・研究演習
    略歴
    東北大学大学院文学研究科博士課程後期3年の課程退学後、東北大学文学部助手、東京国立文化財研究所情報資料部主任研究官、東北大学文学部助教授を経て現職。
    学位
    文学修士
    研究分野
    日本彫刻史
    仏教美術史
    研究課題
    日本彫刻史研究
    汎アジアの舎利信仰と造形
    仏教美術の思想的研究
    研究キーワード
    仏像、空間史、舎利信仰、他界表象
    所属学会等
    美術史学会 美学会 日本仏教綜合研究学会
    研究者紹介DB
    http://db.tohoku.ac.jp/whois/detail/f34ef732b4f5d0722005b0220970bed6.html
  • 主要著書
    『講座日本美術史 第4巻 造形の場』(編著)、東京大学出版会、2005年
    『日本の仏像 飛鳥・白鳳・天平の祈りと美』(中公新書)、2009年
    『日本美術全集2 法隆寺と奈良の寺院』(責任編集)、小学館、2012年
    『仏像―祈りと風景』、敬文舎、2014年
    『仏教美術論集5 機能論―つくる・つかう・つたえる』(編著)、竹林舎、2014年
    主要論文
    「救済の場と造形」(『日本思想史講座1―古代』、ぺりかん社、2012年4月)
    「高橋由一の思想と絵画」(『論集・東洋日本美術史と現場―見つめる・守る・伝える』、竹林舎、2012年5月)
    「南奥羽の観音と風景」(『講座東北の歴史 第五巻 信仰と芸能』、清文堂出版、2014年2月)
    「蓮華蔵世界と正倉院の屏風」(『仏教美術論集5 機能論―つくる・つかう・つたえる』、竹林舎、2014年4月)
    「平等院鳳凰堂の阿闍世王説話―頼通時代の阿弥陀信仰の基層」(『知の挑発 平安後期 頼通文化世界を考える―成熟の行方』、武蔵野書院、2016年7月)
    受賞
    第30回阿部次郎文化賞 酒田市 2013年10月
    報道
    「聖武帝の仏教観映す鳥の姿」(正倉院宝物の屏風についての長岡説の紹介記事)、読売新聞関西版夕刊、2016年10月27日