教員のよこがお

教授 土屋 育子 TSUCHIYA Ikuko

所属

出逢いを大切に

 中国古典の小説・戯曲を専門として、中国戯曲の版本に関する論文や訳注などを発表してきました。最近は少し範囲を広げて、聖蹟図や日本で書かれた中国ものの翻案小説、くずし字で書かれた本の翻字などについても研究発表や論文執筆をしています。
 きっかけは前任校の佐賀大学で、国文学の先生がくずし字の勉強会を立ち上げたことでした。くずし字の勉強については、私はオーバードクターのころに国文学の授業を聴講して簡単な手ほどきを受けたものの、そのあとはずっと独学で行き詰まりを感じていました。この会の発足にあたって教員も参加可と聞いて、渡りに舟とさっそく参加することにしました。さらにありがたいことに、卒業、就職、異動しても参加大歓迎という方針のおかげで、私は仙台に移ってから今に至るまで、継続して参加することが出来ています。
 やがてその会は活動を拡大し、佐賀大学の先生方が中心となって科研費を取り、佐賀大学附属図書館が所蔵する小城鍋島文庫の古典籍の調査を行うことになりました。その活動を通して、私は古典籍の扱い方を実地に学んだり、調査した書籍の解題を執筆したりという貴重な機会を数多く得ました。ただ、この文庫の漢籍は経学書や歴史書が中心で、私の専門に直接関わるものは多くなかったため、研究というよりは自分自身の勉強のために参加するというスタンスでした。
 ところが、そんな私に活を入れるかのように、つまり、その勉強が研究に発展したのが、小城鍋島文庫の古典籍の解説書の共同執筆でした。私は、孔子の生涯を絵と文で記した『聖蹟図説諺解』と、楊貴妃物語の翻案である『通俗明皇後宮伝』という、二つの書籍の解説を担当することにしました。解説執筆のために調べていくうちに、研究につながるちょっとした発見が見つかり、解説文だけでなく、研究発表や論文に発展させることができました。
 このようにいささかのんびりした歩みではありますが、思わぬところで点と点がつながる出逢いを大切にしながら、今後も進めていきたいと考えています。

  • 研究・略歴
  • 著書・論文等
  • 主要担当科目
    中国文学概論、中国文学演習、中国語学中国文学研究演習
    略歴
    長野県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学、佐賀大学文化教育学部准教授、東北大学大学院文学研究科准教授を経て現職。
    学位
    博士(文学)
    研究分野
    中国文学、漢文学
    研究課題
    中国古典戯曲の版本研究、聖蹟図の系統と受容に関する研究
    研究キーワード
    中国古典戯曲、中国古典小説、聖蹟図、漢文学
    所属学会等
    日本中国学会、東方学会、東北中国学会、東北文史哲研究会、東北大学中国文学会
    研究者紹介DB
    https://www.r-info.tohoku.ac.jp/ja/8c1f9d85af265ba3f2eda65966a76fb1.html
  • 主要著書
    『中国戯曲テキストの研究』汲古書院、2013年。
    『和学知辺草【翻刻・注釈・現代語訳】』(中尾友香梨・白石良夫・中尾健一郎・村上義明編 小城鍋島文庫研究会校注)文学通信、2023年。
    『小城鍋島文庫の古典籍たち 書物は語る』(中尾友香梨・白石良夫・二宮愛理編。執筆担当箇所:「孔子さまの物語 『聖蹟図説諺解』」、「楊貴妃物語の翻案と艶笑小説 『通俗明皇後宮伝』」)文学通信、2025年。
    主要論文
    論文:
    「元雑劇テキストの明代以降における継承について」『日本中国学会報』第56集、2004年。
    「弘治本西廂記について」『中国文学報』第68冊、2004年。
    「『通俗明皇後宮伝』の成書について」『集刊東洋学』第133号、2025年。
    翻刻・訳注:
    「『孔子事跡図解』翻字と解題」、『東北大學中國語學文學論集』第28号、2023年。
    「古名家本関漢卿『包待制三勘蝴蝶夢』第一折・第二折訳注稿」(髙崎駿士・室貴明両氏と共著)『東北大学文学研究科研究年報』第75号、2026年。