研究室紹介

日本学専攻 現代日本学研究室 Innovative Japanese Studies

多角的な視点から「日本」をとらえ直す

 ドイツの歴史哲学者リッケルトは、『文化科学と自然科学』で「自然科学」と「文化科学」という言葉の対比を通じて、学問を理系・文系とに区別する考え方の基礎と提出しました。その文系の学問世界の中核をなす文学部の研究は、哲学・歴史学・文学の三大分野からなるものと意識されてきました。
 しかし、今日では文系・理系、さらには哲・史・文というような研究の垣根を意識的に取り払い、新たな研究分野の開拓が模索され、いわゆる「学際的」な研究が数多く生まれています。
 また、研究の国際化が促進され、海外の学者たちと共同して研究の理論や技法を開発する傾向も顕著になっています。
 われわれ現代日本学研究室は、学際化と国際化をメインテーマとして、従来の日本研究では見落とされたり見過ごされてきた「日本」の実像を新たな視点から再構成することを目指します。
 現在の教員の主要な研究は、日本近代の歴史を「グローバルヒストリー」の観点から再評価する、日本社会を「ジェンダー」の観点から分析する、日本文化研究の方法を「社会史」の側面から再編成する、「メディア論」「コミュニケーション論」の観点から近代史を読み直す、と多様で、学生の皆さんにはこうした教員とともに新たな学問創出に取り組んでもらいたいと希望します。
 なお、現代日本学研究室では、学際的で国際的な日本研究のためには「国際経験」が不可欠であると考えています。そのための海外留学・外国人学生との積極的交流を学生時代の経験の柱とする教育指導を行います。広い世界の中で自己を見つめ直し、変貌する学問の魅力を体得したいと考える学生の輪に加わってください。

先輩からのメッセージ

オクロープコヴァ・イェヴドキーヤ OKHLOPKOVA Evdokiia

博士課程 2年
出身高校:Physical-Technical Lyceum(ヤクーツク市、サハ共和国(ヤクーチア)、ロシア連邦)

お勧めしたい本:『骨董・怪談』小泉八雲著、平川祐弘編(株式会社河出書房新社、2004年6月)
その理由:小泉八雲(1850〜1904)は日本の文化を深く愛し、昔話や神話を集め、それらを再話した有名な作家、翻訳者、記者です。八雲は妻の小泉節子(1868-1932)の力を借りながら日本で広まった様々な伝説や物語を語り、明治時代に西洋の読者に日本文化を紹介した最初の作家の一人でした。 『怪談』は1904年に出版され、最高傑作と見なされており、日本だけでなく世界中で祝われています。八雲が紹介した「耳なし芳一」・「雪女」・「ろくろ首」などの話が現代の日本文化にも影響を与えています。

ここが面白い!
文学部

 私が東北大学に留学してから5年が経ってきました。国文学研究室に学部研究生として入り、同研究室の修士課程を修了。2019年4月に現代日本学研究室の博士課程に進学しました。ここで素敵な2年間を過ごしてきましたが、2021年3月に現代日本学研究室における修士課程の卒業生の第一世代を見送ることを楽しみにしています。
 うちの研究室では、勉強にも遊びにも心を尽くしています。我々はお互いと貴重な絆を結び、教授や指導教員から多大な支援を受けています。それに現代日本学研究室は、留学生と日本人の学生が交流しながら、一緒に研究できるところです。留学生の目で日本のことを見てみると、予想外の面白いところが見えてきます。これは全文学研究科においても非常にユニークなことです。
 演習で他の院生の研究発表を聞くことは様々な視点から日本、そして日本学を見ることを意味しますから、自分の研究を深め、より多面的にできるきっかけになります。より広い世界観を持ち、あらゆる観点から日本研究を楽しむ機会を求め、我々のことを知りたいという方々は、ぜひ現代日本学研究室にお立ち寄りください。いつでも大歓迎です。

文学部を目指す
皆さんへ

 文学研究科を目指す皆さんに伝えておきたいのは、「勉強熱心、研究中心」という生活信条です。大学院生の日常生活には困難なことも少なくありませんが、その生活に順応できれば充実した日々を送るようになります。研究室の先輩たちや同級生、先生たちがいつでもサポートしてくれます。一緒に受講の準備をし、研究に関わる悩みなどについて話あうと、快適な研究室の雰囲気を作っていけます。そうした経験の共有ができれば、きっと大学院の数年間を楽しく過ごすことができると思います。
さらに、研究日常生活の良いバランスを取ることが第一。 徹夜で引っ張ったり、研究の進歩に苦労したり、締め切りに間に合わなかったり、インポスター症候群に苦しんだりしますね。残念ながら、以上の悩みが大学院生の生活では避けられません。 それでも重要なのは研究室におけるハードワークだけではなく、食事や睡眠をきちんと取ること、定期的な運動や健康診断など、つまり、自分自身の面倒を見ることです。 そして、最も重要なのは、大事な人々との緊密な関係を維持することによって、自分自身のためのサポートシステムを構築することです。 メンタルヘルスは肉体と同じくらい重要なので、寂しくならないで大変な時に誰かに頼ることは大事です。また、恩返しすることも大事ですね。
 そのような友達を作るために、ひたすら学部内の人々と付き合ってもいいですが、いくつかの学生協会やサークルに参加してみたらいかがでしょうか。 私の個人的な経験からお勧めできるのは、TUFSA(東北大学留学生協会)・TEDxTohokuUniversity・国際オアシスです。 日本人の学生なら、そこでたくさんの国際的な友達を作り、英語で話すスキルを向上させることができます。留学生なら、SenTIA(仙台観光国際協会)や東北大学所属図書館での留学生支援コンシェルジュなどに参加することもできます。日本人との交流、あらゆるイベントの主催、アルバイトの報酬を直接に体験することができます。東北大学は、自己実現のためのチャンスを多く提供してくれます。将来の専門の選択などについて悩んでいる方は、様々なことを試してみてください。きっと、自分の中に隠れている力が見えてくると思います。