日本思想史研究室の紹介


研究室の沿革

日本思想史研究室は、大正12年法文学部開設とともに発足した。当時の講座名は文化史学第一講座であり、昭和38年に日本思想史学講座と称し、平成11年からは大学院重点化にともなう組織の再編成により日本文化学講座日本思想史専攻分野となった。初代の講座担当者は村岡典嗣で、大正13年着任し、昭和21年まで在職した。村岡は日本思想史学の開拓者の一人で、国学・神道・儒教・キリシタン・洋学などの研究に業績を挙げ、門下を育成した。本研究室をわが国の日本思想史学研究の拠点にまで育て上げた。村岡退官後10年近く担当教授を欠いたが、昭和29年に竹岡勝也が着任し、昭和32年まで在職した。竹岡は阿部次郎の実弟で、国学研究を中心に個性的業績を残した。

昭和33年石田一良が着任し、昭和52年まで在職した。石田は、独自の文化史学的方法によって文化史・思想史の多方面にわたる業績を挙げ、門下の育成に当たった。昭和43年には日本思想史学会を創設した。昭和48年、石田の下で玉懸博之が講師となり、昭和61年から平成13年まで教授として研究室の運営に当たった。玉懸は石田の思想史学の方法を継承するとともに、村岡以来の文献実証主義を取り入れ、政治思想や歴史思想の分野で、堅実な実証に裏打ちされた数々の業績を上げた。平成4年には佐藤弘夫が助教授として赴任し、平成13年からは教授として研究室を主宰している。平成16年には片岡龍が講師として加わり、翌年には助教授、平成19年には准教授として学生の指導にあたっている。

当研究室は、発足以来、国文学専攻・国語学専攻とともに合同研究室を形づくっていたが、昭和39年に独立して独自の研究室をもち現在にいたっている。

当研究室は、全国的にみて、日本思想史学に関する研究室の中で、学部から大学院後期課程までを備えた唯一の研究室である。

現在の研究活動

日本思想史学に関する本邦最初の学術誌である「日本思想史研究」が、昭和42年石田により発刊され、現在39号(平成20年4月現在)を数えている。同誌には、研究室の教官・院生が論文を載せて、当研究室の研究・教育の成果を広く世に問うとともに、、国内外の研究者に多大の使宜を与えている。主として研究室の在籍者と出身者とによりなる日本思想史研究会も昭和30年代から毎月開催され、現在に及んでいる。平成4年以降、本研究会が主宰して毎年夏季セミナーを開催し、大学の枠を超えた若手研究者の発表の場を提供している。平成14年には研究会が主体となって、機関誌「年報日本思想史」が創刊された。

石田により創設された全国学会・日本思想史学会は、昭和43年発足以来、平成11年まで事務局を当研究室に置いていた。日本思想史学会には、研究室の教官・院生・大学院修了者が積極的に運営に参画している。また、国文学研究室・国語学研究室等と協力して日本文芸研究会を組織し、春の大会・研究会の開催、機関誌「文芸研究」の発行などの面に、研究室をあげて参加している。

教育方針と学生の研究活動

本研究室は歴史学として日本思想史の研究を行うものであって、哲学的な視点から日本の思想を研究するものではない。したがってその研究は単なる日本思想の研究や日本思想論に終わってはならない。思想という現象を、その思想の成立する時代状況の中に組み込んでとらえることを学生に求めている。すなわち、思想を時代の政治的現実、経済的現実そして文化的現実と関連づけてとらえること、ある時代的刻印を帯たものとしてとらえること、を求めている。

とはいっても、当研究室は発足以来自由な学風を謳っている。上記の思想史学としての大枠を備えることは要求されるものの、具体的な研究においては、さまざまな歴史観・立場・方法・視点が広く容認される。ただし、それぞれの歴史観・立場・視点・方法をみずからのものとし、研究上これらを適切にいかすことが求められる。かくして学生は、それぞれの関心・興味に応じて主体的に研究テーマを選定し、その歴史観・方法・視点などについても独自の判断にも続いて選択し、研究を推進している。

学部生・大学院生・研究生の研究テーマは、時代の上からは、古代・中世・近世・近代と全時代にまたがり、領域の上からは、儒教・仏教・神道・国学・キリスト教その他全領域に及んでいる。大学院生にあっては、自らのテーマを深く追求するとともに、古代思想史像・中世思想史像・近世思想史像・近代思想史像のいずれか、さらにできれば日本思想史の全体像、すなわち政治史・社会経済史とは異なる日本思想史の像をそれぞれ追求・構築することを求めている。

大学院生は、日本思想史学会、日本文芸研究会、東北史学会、比較思想学会その他に所属し、年次大会で研究発表し、論文の投稿を行っている。

国際交流

当研究室は、研究室として恒常的に外国の研究機関と研究・教育上の交流をすることはしていないが、個々の教官は国際学会への参加、外国の有力研究者との交流などを積極的に行ってきた。石田は在職中十数度にわたって欧・米その他に赴き、研究指導・共同研究などに携わり、日本思想史学を国際的に振興させる上で貢献し、玉懸は平成元年中国の北京日本学研究センターに赴いて講義・研究指導を行い、平成7年にはインドネシア大学大学院に赴いて講義・研究指導を行った。佐藤もほとんど毎年国際学会・シンポジウムに参加し、発表を行なっている。片岡も韓国や台湾を中心として毎年国際学会・シンポジウムに参加し、発表を行っている。なお平成19年には、東北大学文学研究科中国思想・中国哲学研究室、韓国の丁茶山学術文化財団との共催で国際シンポジウムを開催した。

留学生の受け入れには早くより積極的で、現在までに3名の外国人の留学生が博士号を取得している。平成20年4月現在、合計7名の留学生が所属している。


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最終更新日:2008/05/21