第 54 回東北哲学会研究発表要旨

間違いの可能性と懐疑論  --最晩年ウィトゲンシュタインの知識をめぐる考察

山田 圭一 (東北大学)


ウィトゲンシュタインの最晩年の思索が、ムーアの懐疑論論駁によって触発されて展開されたことは周知の事実である。 しかしながら、彼のこの最後の思索は、そもそもどのような議論を対象にして思索を展開しているのかという点を含めて 様々な方向に拡散しており、一つの確定した思想の流れを読み取ることはなかなか困難である。

そこで今発表では、ウィトゲンシュタインの「間違いの可能性」に関する考察に焦点を当てて、この観点から彼の最晩年 の思索の形成過程と現代的意義を明らかにすることを目指す。

上記の目的を達するために、まずはそもそもなぜ「間違いの可能性」が重要な問題となるのかという点を、 懐疑論とはいかなる主張をなす議論なのかという点に関する考察から明らかにする。 そして、知識主張における特徴として「間違いの可能性を排除できる」ことが必要とされることを示した上で、 知識に対する懐疑論と対峙しようとするならば間違いの可能性に関する考察が不可避であることを示す。

次に「間違えることがありえない」ということの二つの意味を区別した上で、 通常の知識主張が為される場合と違って「間違いの可能性が論理的に排除されている」場合とはどのような場合なのかを考察する。 そしてこの間違いの論理的不可能に関する後期哲学からの連続性と新しい展開を明らかにした上で、 彼の最晩年の思索が含んでいる哲学的意義を、従来のウィトゲンシュタイン解釈とは異なる視点から描き出すことを試みる。


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