『類聚国史(るいじゅうこくし)』は、菅原道真が編纂した歴史書です。道真は、寛平5年(893)1月には、宇多天皇から編纂の命を受けていました。この書物の形式は、中国の会要、類書にならい、『日本書紀』から始まる6つの「国史」の記事を、内容毎に分類、つまり「類聚」したものです。その目的は、編年体で記された歴史書を簡便に調査することにあったと考えられます。
東北大学が所蔵する『類聚国史』巻二十五は、神祇部に続く、帝王部の第五にあたります(図1・2)。帝王部の第一から第四は、歴代天皇の誕生や即位、死没・譲位などの記事があったと考えられます。そのあとの第五は、前半の「太上天皇(だじょうてんのう)」の項目に、持統天皇以下11人のおもに譲位と死没に関する記事があり、後半の「追号天皇」の項目には、岡宮御宇天皇(おかのみやにあめのしたしろしめししすめらみこと・草壁皇子)以下4人が、没後に天皇号を与えられたことなどが記されています。
『類聚国史』は全部で200巻からなりますが、今は写本61巻と逸文が伝えられています。本巻は、加賀前田藩に伝えられ、現在は前田育徳会尊経閣文庫(そんけいかくぶんこ)所蔵になる4つの巻とともに、平安時代の終わりから鎌倉時代に書写されたとされる古写本のひとつです。装丁は、巻子仕立てで、新表紙と、本紙33紙からなります。
本巻はもともと壬生家(みぶけ)の所蔵でした。それは、旧表紙であったとも推測される別紙の外題部分に、「類聚国史巻第廿五 壬生官務旧蔵」と記されていることなどが根拠となります(図3)。壬生家旧蔵本は、ほかにも尊経閣文庫所蔵の古写本(巻百七十一・巻百七十七など)が伝えられています。