開催レポート
東北大学市民オープンキャンパス「紅葉の賀」を開催
東北大学文学研究科と植物園は、11月3日文化の日に2024年度東北大学市民オープンキャンパス「紅葉の賀」を開催いたしました。2005年に始まったこの催しは今年で18回目となりました。当日は前日と打って変わっての晴天に恵まれ、昨年を大きく上回る390名ほどの方々が参加されました。また、今年は文学研究科ならではの高大連携の試みとして、高校生を対象とした第1回紅葉の賀高校生俳句賞が設けられました。全国的にも数少ない大学主催の高校生向け俳句賞の開始は、新聞等にも取り上げられて注目を集めました。短い募集期間にもかかわらず、全国各地から総勢59名、117句の応募がありました。
当日の午前の部は、吟行といけばな展示から始まりました。吟行にご参加の方々は、午前9時の開場前から12時30分の締め切り直前まで熱心に取り組まれ、51の投句が寄せられました。いけばな展示は、草月流本部講師の丹野霞園先生と草月流師範の佐藤霞虹先生にお願いし、今年は植物園ロビーと文学部第1講義室の2カ所に展示されました。会場や企画の雰囲気をそれぞれ異なる趣で表現した豪華ないけばなが飾られました。
10時からは植物園でオープニングセレモニーが始まり、木村敏明文学研究科長・牧雅之植物園長に開会のご挨拶をいただいた後、俳句の審査を担当される渡辺誠一郎先生(宮城県現代俳句協会会長)・長谷川冬虹(公一)名誉教授、公開講演講師の佐藤弘夫名誉教授よりそれぞれお言葉をいただきました。
植物園の前庭では、茶道裏千家正教授である小野宗智先生と関係者の皆様による野点に、多くの方々が野趣あふれる一服を楽しんでおられました。加えて、常盤木学園高等学校筝曲部の皆様による爽やかな箏の演奏が行われました。会場ではお茶や琴の体験コーナーも設けられ、多くの方々が興味津々に参加されていました。
植物園本館ロビーでは、文学部・文学研究科の学生2名を含む東北大学交響楽団有志による弦楽四重奏のコンサートが開催されました。いけばなの展示を背景に、童謡・映画音楽からモーツアルトのディベルティメントまで、幅広いレパートリーで多くの聴衆を魅了しました。
11時からは植物園内ガイド付き散策が行われました。定員を超える申し込みがあり、実際に43名の方々がご参加になりました。当研究科から柳原敏昭教授・引野亨輔准教授がガイドを務められ、植物園周辺の歴史的背景や園内に残る中世の板碑について、ご専門の立場から詳しい解説をいただきました。
今夏の異例の暑さからか紅葉の色づきはもう少しではありましたが、それでも午前の多彩な催し物を300名近い皆様が満喫されていました。
加えて、今年はこの日限定で文学研究科棟3階の阿部次郎記念室が一般公開されました。同室は今年3月に惜しまれながら閉館した阿部次郎記念館の後継として設けられ、一般公開としては今回が初めてとなります。
午後の部では、文学研究科佐藤弘夫名誉教授(日本思想史)による公開講演が開催されました。先生ならではの親しみやすい語り口による、仙台の近世以前のすがたとその当時の人々の信仰・思想の多様性について、受講者の皆様も真剣に耳を傾けていらっしゃいました。
続いて、高校生俳句賞・吟行授賞式が開かれました。まず、高校生俳句賞では栄えある第1回の受賞者として、渡辺誠一郎賞6句ならびに文学部長賞6句が発表されました。会場には、愛媛・千葉・茨城・山形・宮城の各県から受賞者5名が会場に駆けつけ、諸事情により来場できなかった受賞者もZoomで授賞式に参加しました。渡辺誠一郎先生・木村文学部長より賞の授与が行われた後、受賞者には賞品として文学部教員執筆のテキスト『人文社会科学の未来へ』と東北大学図書館の一筆箋、さらに渡辺先生自筆の句の色紙が授与されました。受賞作の発表の後、渡辺先生と文学部長賞の審査に当たられた長谷川公一名誉教授(本研究科社会学専攻)から受賞作についての講評がありました。受賞した高校生の句には、いずれも先生方から非常に高い評価と期待が寄せられ、さらにこの会にも若々しい一陣の風を吹き込むものとなりました。
続いて吟行授賞式が行われ、渡辺誠一郎先生三席、文学研究科長賞三席の発表と渡辺先生・木村文学部長からの表彰があり、受賞者には一筆箋等の東北大グッズが授与されました。その後、渡辺先生・長谷川先生から講評があり、受賞作についての子細な鑑賞がありました。受賞の句は、いずれも秋の風情を随所に織り込んだ優れたものでした。
文学研究科は今後も市民のみなさまとのこのような交流の機会を設け、社会連携に係る活動を推進してまいります。来年の紅葉の賀でお目にかかれるのを、心よりお待ちしております。