履修モデル

言語学専修

 言語学は人間の言語を科学的に研究する学問分野である。本研究室では、主に3種類のアプローチ(記述言語学、理論言語学、実験言語学)を有機的に組み合わせて研究と教育を行っている。その際、研究手法、研究対象、理論的オリエンテーションなどに関して健全な多様性を重視している。
 記述言語学では、個々の言語が(音声、音韻、形態、語彙、統語、意味、語用などの側面において)どのような性質を持っているかを調査、分析、記録する。記述言語学の対象はどの言語でも良く、日本語のように既に相当程度研究が行われている言語をさらに詳しく調べる場合や、これまでほとんど知られていない言語を一から記述する場合もある。特に後者だけに限定して狭い意味で記述言語学という用語を使うこともある。本研究室では、日本語、中国語、英語などのいわゆる大言語に加えて、カクチケル語、タロコ語、トンガ語、ツツバ語など絶滅が危惧される少数民族言語を対象とし、人間言語の個別性(個々の言語に固有であると考えられる特性)と普遍性(諸言語に共通であると考えられる特性)の解明に取り組んでいる。もちろん学生が上記以外の言語を研究することを妨げない(推奨し支援する)。
 理論言語学では、言語使用者の脳内にある言語知識(文法、語彙)の内容、母語や第二言語の獲得、言語処理過程、ならびにそれらの神経基盤に関するモデル(理論的仮説)を構築し検証し修正していく。また、話し手や聞き手、状況との関係における言語運用の研究も、モデルの構築と仮説検証を行うという点では共通しているので、それを含めて理論言語学と呼ぶこともある。どちらの場合も、モデルを検証する際には、研究者の内省に加えて、記述言語学や実験言語学の手法を使う。本研究室では、言語そのものだけでなく、言語と思考の関係やコミュニケーションにおける言語の役割などを含めて、言語を認知や社会などより広い文脈に位置付ける広義の理論言語学のアプローチを採っている。
 実験言語学では、記述言語学の研究で得られた一般化や理論言語学のモデルの予測などをコーパス、質問紙調査、行動実験、脳機能計測などを用いて検証したり、未知の現象について探索的に調査・実験したりする。その成果を記述言語学や理論言語学の研究にフィードバックし、相乗効果により螺旋状に研究を推進する。従来、実験言語学は様々な制約により一部の先進国の実験室の中だけで行われてきた。そのため、研究対象が経済的に豊かな国や地域で話されているごく少数の言語に極端に偏っている。本研究室では、絶滅が危惧される少数民族言語を含む多様な言語を対象に、話者の居住地に実験装置を持ち込み、最先端の実験手法で多角的に研究を進めている。また、言語を使用する人間の意識的・無意識的な心理的過程に着目した実験も行う。人間の言語運用の多様性や生涯を通じた発達的変容を明らかにすべく、定型発達の若年者に加え、高齢層や失語症者、発達障害者などの「非典型的話者」に光を当てる研究にも力を入れている。
 皆さんも、言語の性質の探究を通して、言語の唯一の使い手である人間とはどのような存在なのかを、私達と一緒に考えてみませんか。

言語学専修履修モデル

学年 授業科目名 単位数
1年次 人文社会総論 4
英語原書講読入門 2
その他(全学教育,基礎専門科目入門) 28~42
小計 34~48
2年次 言語学概論Ⅰ,Ⅱ 4
言語学基礎講読Ⅰ,Ⅱ 4
言語学基礎演習Ⅰ,Ⅱ 4
音声学Ⅰ,Ⅱ 4
実験心理学概論 2
その他 14~30
小計 32~48
3年次 記述言語学各論 2
理論言語学各論 2
言語交流学各論(学習・言語心理学) 2
記述言語学演習 2
理論言語学演習 2
実験言語学演習 2
言語学各論Ⅰ - Ⅳ 4〜8
言語学演習Ⅰ - Ⅳ
言語学論文演習Ⅰ,Ⅱ 4
その他 12~24
小計 32~48
4年次 卒業論文・卒業研究 12
記述言語学各論 8~16
理論言語学各論
言語交流学各論(学習・言語心理学)
記述言語学演習
理論言語学演習
実験言語学演習
言語学各論Ⅰ - Ⅳ
言語学演習Ⅰ - Ⅳ
言語学論文演習Ⅰ,Ⅱ 4
その他 8~16
小計 32~48