著作

著作タイトル Middlemen of Modernity: Local Elites and Agricultural Development in Modern Japan
著作者 Christopher Craig
出版年 2021年9月
出版社 University of Hawaii Press
内容
本書は宮城県北部の「仙北地方」と呼ばれる地域の一農村を中心に、戦前の宮城県における農業発展の諸段階を検証したものである。具体的には、明治初期において米作の生産量、品質、およぶ生産の安定性が非常に低かった仙北地方が第二次世界大戦終結時までに全国の米生産と同レベルに到達し、さらには超えるようになった過程を明らかにした。
 明治中・後期、近代化を推し進めた明治政府は農業発展の大切さを認識しつつも、多くの国費を重工業や軍隊に費やし、農業振興は後回しになった。そうした国の代わりに、農業の発展・振興策を担ったのは、山県有朋が「名望のあるもの」と指摘した人、つまり農村の最上階層であった。彼ら名望家や地主の農業発展に向けた振興活動は1870年代の半ばから1910年代まで続き、農業の発展に寄与したが、同時に農村の社会的な安定にダメージを与えた。その結果、政府は政策を転換し農業や農村に関する法律を改変し、地主や名望家指導による農業制度発展計画は挫折するに至ったのである。