PRO-pose.

社会を生きる先輩たちの
「プロのポーズ」とは

常に疑問や好奇心を持ち、その本質に迫ること。 高校教諭 戸田道彦さん 常に疑問や好奇心を持ち、その本質に迫ること。 高校教諭 戸田道彦さん

中身が詰まったサンドウィッチに。中身が詰まった
サンドウィッチに。

現在、宮城県仙台三桜高校の英語教諭として教鞭を執り、2年生のクラス担任も務めている戸田道彦さん。
「高校2年生の期間はよく“中だるみ”と表現されることがありますが、私自身はむしろ“サンドウィッチの具”だと捉えています。勉強はもちろんのこと、部活動に打ち込むことや大切な仲間たちとの関わりなど、これからの人生にとってかけがえのない価値を持つ経験ができるよう、中身がギュッと詰まった魅力的な一年間を送ってもらうための環境づくりも担任としての大切な役割です」。
戸田さんは英語の授業のほか、仙台市野草園や地底の森ミュージアムなどの文教施設を訪問する校外活動を通じて、生徒たちの探究心を育む総合学習の企画なども担当している。
「当校では2年生の12月に修学旅行が行われますが、それをひとつの節目として、以降は生徒たちが自ら気持ちを受験モードに切り替えてくれることがうれしいですね。かつて受験を経験した立場から、一人ひとりにできるだけ具体的なアドバイスをするよう心がけています」。

文学部の先輩方による教えのリレー。文学部の先輩方による
教えのリレー。

新潟で生まれ育った戸田さんが、将来を考えるきっかけとなったのは高校1年のときの英語の先生の存在だった。
「授業中は基本的に“オールイングリッシュ”で、日本語を使うことが許されませんでした。最初は戸惑いましたが、もともと映画や音楽でも英国ものが好きで、英語が身近だったこともあり、次第に慣れてユニークな授業内容に引き込まれるうち、英語に対する興味がますます高まっていきました。この先生が、東北大学文学部出身だったんです」。
その後、両親を交えて進学候補となる各大学のデータを収集して検証。第一志望を東北大学文学部に定めたという戸田さんはオープンキャンパスに参加した。
島越郎先生による英語学のイントロダクションを見たときに“これだ!”と思いました。それまで抱いていた、自分は文法を知らなくても日本語を話せるのに、英語ではなぜ文法から学び始めるのかという、頭の中のモヤモヤした疑問が一気に晴れ渡っていくような明快な解を得た心境で、イントロダクションのその先を学びたいと決心しました」。
こうして文学部人文社会学科英語学専修に進んだ戸田さんは、英語と言語という2つの領域について、自分自身が“なぜ?”と疑問に思うことをひたすら探究し、学びを深めていく。

教わったこと、教えていくこと。教わったこと、
教えていくこと。

戸田さんが2年次に選択したのは金子義明先生英語学研究室
「金子先生には、アメリカの言語哲学者ノーム・チョムスキーの著作『言語理論の論理構造』で提唱された生成文法理論を基に多様な角度から英語と言語について教えていただきました。金子先生はまさに知識の泉という存在ですが、あるとき“騙されちゃだめだよ”と言葉をかけられたことがありました。私自身これは、表層的な見せかけでなく常に疑問や好奇心を持ちながら物事の本質に迫ることが大事だということと解釈し、生徒たちにも勉強に限らず世の中のさまざまなことに好奇心を持つ大切さを話しています」。
自らの疑問を素直に受け止め、自らその解明に突き進んでいく。ときには研究室の親友と夜を徹して議論を重ね、お互いの考えを精査していったという戸田さん。
「大学院文学研究科に進学したのは、もっと英語学を極め、英語学を自分の強みや土台として確立し社会に出て行きたいという思いからでした。大学院で学んだ2年は、いまでも自分にとって必要な時間だったと実感しています」。
高校1年で英語の先生の授業に魅せられ、オープンキャンパスで島先生から人生を左右するインパクトを与えられ、研究室では金子先生から物事の本質に迫る尊さを教わった戸田さん。今度は彼自身が“戸田先生に教わってよかった”と言われる存在になる番だ。

戸田 道彦Michihiko Toda

2016年3月、大学院文学研究科文化科学専攻英語学専攻分野修了後、宮城県公立学校教員に採用。修士論文は「Morphosyntax of Verbal Extended Projections in English(英語における動詞的拡大投射の形態統語特性)」