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『月刊言語』第27巻(1998)11月号, pp.112-113 掲載

インターネット言語学情報 第11回 ― 古典テキスト

後藤 斉


インターネットが先端の学問分野やビジネスの世界で使われていることはなんの不思議もないが、 あまり時流に乗っているとはいえない伝統的な分野にもインターネットの利用者はいる。 そして、そのような人たちの中にむしろ非常に積極的に利用している人が見られることは面白い。 言語研究のなかでは、さしずめ文献学や歴史言語学があまりはやらない分野といえるだろう。 今回はこれらの分野に関係した、諸言語の古典テキストを提供するウェブサイトをいくつか 紹介したい。

Oxford Text Archive (http://sable.ox.ac.uk/ota/) は、1976年以来寄託を受けた種々の言語のテキストを集積して、磁気テープやフロッピーディスクの形で 希望者に提供するサービスを行っていた。現在はウェブサイトでテキストのカタログが閲覧できるが、 寄託の条件などの理由で、利用には比較的制約が多く、またウェブサイトから直接テキストを ダウンロードできるとは限らない。

印欧語族の諸言語については、TITUS Thesaurus Indogermanischer Text- und Sprachmaterialien (http://titus.uni-frankfurt.de/)が情報の集積地として機能しており、語派別に分類した電子テキストの リストがある。挙げられている項目の多くは準備中となっているが、プロジェクトの関係者の 熱意が感じられる。

ギリシャ語とラテン語は、実に驚くほどのテキストがすでに各地で電子化されている。それぞれ Perseus Project (http://www.perseus.tufts.edu/) と Project Libellus (http://www.hhhh.org/perseant/libellus/)が代表格と言えるだろうが、それ以外にも 多いので、Argos: Limited Area Search of the Ancient and Medieval Internet (http://argos.evansville.edu/)で検索するとよいだろう。

中世ヨーロッパの諸言語のテキストについては、 Labyrinth Library (http://www.georgetown.edu/labyrinth/library/library.html) が文字どおり迷宮の道案内となって くれるだろう。中世フランス語に限れば、 Old French Language Page (http://www.geocities.com/Athens/Acropolis/8716/) というインディアナ大学の大学院生によるページが、 個人の力でできる貢献の実例になっている。中世の北欧語では、 Project Runeberg (http://www.lysator.liu.se/runeberg/) が知られている。

中国の古典も台湾をはじめ世界各地でこのところ急速に精力的な電子化が進みつつあるとの ことであり、日本でもいくつかのプロジェクトが動いている。ウェブ上の探索の 出発点としては、新潟大学児玉憲明氏の 「中国古典籍データベース」 (http://hyena.hle.niigata-u.ac.jp/files/dbase.html)などがよいであろう。

日本語の古典文学テキストも個人やグループの努力のおかげでかなりの数が 電子化されており、福井大学岡島昭浩氏による「日本文学等テキストファイル」 (http://kuzan.f-edu.fukui-u.ac.jp/bungaku.htm)や甲南女子大学菊池真一氏の 「日本文学関係テキストファイル等(作品別・五十音順)」 (http://www.konan-wu.ac.jp/~kikuchi/linkd.html) などからたどることができる(いずれも近代文学を含む)。 国立の機関による大規模なプロジェクトとしては、国文学研究資料館の 「日本古典文学大系本文データベース」が準備中であるそうだが(http://www.nijl.ac.jp/~jsf/)、 これが早く公開されて、多くの研究者に裨益することを望みたい。

古典テキストでは原作者の著作権は問題にならないが、校訂者の権利が関係することがある。 また、専門家からみれば、校訂本文の選択によって電子テキストの価値は全く違ってくるだろう。 電子化の際に失われる情報もあるし、電子テキストの利用のしかたは研究者自らが考えねば ならない部分も多い。このような問題点はあるものの、テキストをはじめとする学術情報は 関心あるすべての研究者に開かれているべきである。それを実現する手段としてインターネットは 好適なものといえる。

(ごとうひとし/言語学・ロマンス語学)


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